2023年02月05日 世界選手権UAE ストリート男子決勝 | CURRENT

2023年02月05日 世界選手権UAE ストリート男子決勝

| 2023.02.14
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SHARJAH, UNITED ARAB EMIRATES - FEBRUARY 05: (L-R) Second placed Gustavo Ribeiro of Portugal, winner Aurelien Giraud of France and third placed Ginwoo Onodera of Japan celebrate on the podium during the Sharjah Skateboarding Street and Park World Championships 2023on February 05, 2023 in Sharjah, United Arab Emirates. (Photo by Francois Nel/Getty Images)

パリ五輪金メダル候補で昨年のローマで行われたパリ五輪予選の開幕戦でチャンピオンとなったナイジャ・ヒューストン(USA)が出場を回避。
東京五輪金メダリストでこちらもパリ五輪金メダル候補の堀米 雄斗が直前まで体調不良により調整不足の影響なのか、まさかの予選落ち。
同じく東京五輪出場の青木 勇貴斗(日本)も予選落ちと波乱の今大会。
ファイナルに残ったのは最近の国際大会でも常連組に世界選手権初出場、準決勝をトップで勝ち上がった12歳。
日本の小野寺 吟雲に世界中の注目が集まる。
最近の国際大会で強さを発揮し続けるグスタボ・リベイロ(ポルトガル)やテクニックとビッグトリックでジャッジだけでなく世界中のオーディエンスを魅了するオーレリアン・ジロー(フランス)、パークとの2刀流でパリ五輪出場を狙うジャガー・イートン(USA)らに初出場の小野寺がどんな戦いを見せるか注目。





[ 男子ストリート決勝は 1:20:01〜02:46:05 ]


[ラン]

一本目、まずは抜群の安定感でファイナルまで勝ち上がったスロバキアのリヒャルドがフルメイクし他のライダーにプレッシャーを与える立ち上がりに。
クリス (USA)、ケルビン(BRA)、オーレリアン(FRA)とフルメイクでスコアを作る中、頭ひとつ抜け出したのはポルトガルのグスタボが91.18の圧巻の滑りを披露。
期待のかかる日本の小野寺、白井、ジャガー(USA)はスコアメイクする事が出来ず2本目勝負と後がない状況となった。


2本目はリヒャルド(SVK)が1本目を上回る80.00とスコアを残し良い流れを作る。
1本目でフルメイクを残したクリス、ケルビン、オーレリアン、グスタボは更なるスコアアップを狙ったがミスし1本目のスコアが採用となった。
対象的にプレッシャーのかかるジャガー、小野寺、白井。
白井は1本目でミスした箇所をクリアし勢いに乗れるかと思ったが終盤でミスし悔しい64.63と優勝争いには厳しいスコアとなった。
ジャガーは見事に2本目で修正、フルメイクしスコアもグスタボに次ぐ90.00をマーク。
かなりプレッシャーのかかる中、後がない小野寺の最後のラン。
そんな重圧を完全に跳ね除け、脅威の12歳は見事フルメイクし87.00と4位につけ続く「ベストトリック」での逆転優勝に望みを繋いだ。
世界選手権初出場でこのプレッシャーをクリアしたのは会場はもちろん、世界中でLIVEを観ていた全員が驚いたことは容易に想像できる。



[ベストトリック]

まずはここで成功しスコアを作り気持ちを落ち着いて勝負に望みたい1本目。
ここでも抜群の安定感でリヒャルドがダウンレールでスイッチヒールフロントテールスライドをダウンレールで決め80.00を獲得。
優勝候補のグスタボ、ジャガー、小野寺らも1本目でスコアメイクに成功し優位に立つ中、ランで満足の結果を残せなかった日本の白井が圧巻のノーリキャバレリアルバックサイドテールスライドビッグスピンを完璧に決め、91.15をマークしそのメンタルタフネスを発揮し会場を沸かせた。
オーレリアンとケルビンはミスしスコアを残せなかった。



2本目、やはりここでもリヒャルドがスコアを残し採用3本を揃え後半の戦いを優位に持って行った。
小野寺も成功させリヒャルドに続いてスコアを3本揃え後半戦へ。
白井、クリスがミス。
ジャガーもミスし残り3本中2本を成功させなければならない苦しい状況に追い込まれる。
ケルビンは得意の持ち技、ハーフキャブノーズスライドtoバックサイドテールをダウンレールで決め80.15をマークし後半戦へ望みをつなぐ。

今大会の明暗を分けた2本目となったグスタボとオーレリアン。

グスタボは360フリップバックサイドノーズブラントという世界でも成功させられるライダーがほとんどいない大技をダウンレールで決めるも、90.20と想定していたスコアとはかけ離れていたのか不満をあらわにする。
オーレリアンは1本目でミスした同じ技、バンクから飛び出しセンターにある大きなレッジを丸々超えるハードフリップリバートという超人的なテクニックと跳躍力を見せ見事93.36のビッグスコアを叩き出した。



3本目でスコアを伸ばしたのはここまで安定した成功を重ね続けるスロバキアのリヒャルドがバリアルヒールバックサイド5050というテクニカルなトリックをダウンレッジで決め82.42。
ケルビンもノーリー180スイッチフィーブルグラインドリバーとを決めるも70.04と採用3本を揃えた。
その他のライダーは3本目をミスしスコアを伸ばせなかった。



4本目、2本目の影響を引きずったか、トップに立つには87.96と現実的なスコアが求めらるグスタボが360フリップからフロントフィーブルグラインドをダウンレールで狙うもトラックがかからずボードスライドになってしまう。新たなルールとなった自己申告によりノースコアとなった。
ケルビン、白井もミス。
ここで決め採用3本を残し最終5本目で勝負をかけたいジャガー、クリスのアメリカ勢は共にミスし2本目から4連続ミスと後がない厳しい状況に。
リヒャルドは激しく変動する周りの状況も自身の滑りに完全に波に乗りここでもバリアルヒールバックサイド5-0グラインドを決め、83.00で合計245.42と伸ばした。
優勝を狙うには是が非でもスコアを伸ばしたい日本の小野寺はフロントブラントスライドビッグスピンフリップアウトを3本目のミスを修正し決め88.00、トータルスコアも263.04の3位に付け最終トライ勝負に。
フランスのオーレリアンがビッグステアでバックサイド360キックフリップを2回目で見事決め91.48の269.33の首位に立った。

首位オーレリアンから3位小野寺まで6.29差の混戦で最終5本目へ。


ここまで安定してスコアを伸ばしてきたリヒャルドが更なるスコアメイクに挑戦するもミス、245.42で終えた。
一矢報いたい白井も果敢にトライするもスコアを揃えることはできず155.78の悔しい結果に。
スコアを揃えて一つでも上の順位を狙いたいジャガーとクリス。
クリスは2本目から一貫してトライし続け、ラストで成功しかけるも惜しくもミスし179.08。
ジャガーも揃えることが出来ず179.15と、優勝候補が3本揃えることができず波乱の結果に。
国際大会の経験豊富なケルビンはラストをしっかり決めスコアを248.59とし、順位も4位に伸ばした。
優勝争いは小野寺、グスタボ、オーレリアンに絞られた。
オーレリアンは一度ミスしたトリックに再度挑戦もミス、グスタボと小野寺のトライを待つ。
続くグスタボは4トライ目でミスしたトリックに再度挑戦もレールに掛けることができずこちらもスコアはそのままに。
逆転優勝を狙う小野寺は一貫してダウンレールに。
フリップフロントサイドブラントビッグスピンフリップアウトを狙うもミス。
この結果優勝はフランスのオーレリアン・ジラウド、2位にポルトガルのグスタボ・リベイロ、3位は日本の小野寺 吟雲となった。




ランのマスト採用ルールで1本目をフルメイクするライダーが有利なことは明確だが2本目で見事修正するメンタルタフネスも勝敗に大きく影響した印象。
最近の国際大会では強さを見せ続けているポルトガルのグスタホ・リベイロは今大会も難易度の高いトリックを次々と決め強さを見せたが2本目のスコアが想定していたスコアと離れていたのかこれには本人も不満のリアクション、これによりメンタルが揺さぶられたのか3、4、5本目をミスしスコアを伸ばせず悔しい2位フィニッシュとなった。

今回最も注目を集めた日本の小野寺もランで1本目をミスし2本目へのプレッシャーが懸念されたがそのプレッシャーを見事跳ね除け2本目をフルメイク、ベストトリックでも5本中3本を決めスコアを伸ばし日本人最高位の3位表彰台を獲得。

久しぶりの国際大会優勝で優勝で感極まる場面が印象的だフランスのオウレリアン・ジラウドは持ち前のテクニックとビッグトリッカーぶりを遺憾なく発揮し見事優勝。

ルール変更でランが注目されがちだが、ベストトリックも5本中3本採用から2本に変更になりより駆け引き要素が大きくなったことが今後影響していくことは間違いない。
1本を早めに決めてスコアを出し、2本目以降でビッグスコアを狙ったり前半でビッグスコアを狙い後半で修正するのか。

これらはライバルのスコアの出し方などでも変わってくると思われ2023年度シーズンの第1戦目となった今大会では大きな駆け引きは見られなかったが今後必ずそういった場面が出てくるのでその辺りも注目していきたい。

そして、小野寺をはじめブラジルのフィリップや今大会セミファイナルまで進出した日本の佐々木、松本ら世界の次世代ライダーがどのくらい実力伸ばしてくるのか。
また今回不参加だったナイジャ・ヒューストン、大会前の体調不良により調整不足でまさかの予選落ちとなった五輪王者、堀米 雄斗らが新世代らとどういった戦いを見せるのか。
実力は拮抗しており、目まぐるしく入れ替わる勢力図が今後も楽しみだと感じたUAE大会だった。




東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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