2023年02月12日 世界選手権UAE パーク女子決勝 | CURRENT

2023年02月12日 世界選手権UAE パーク女子決勝

| 2023.02.15
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Photo by Francois Nel/Getty Images

パリ五輪への初ポイント獲得となる今大会、パークスタイルはストリートと共に日本のお家芸となりつつある種目。
日本の中村 貴咲は惜しくもセミファイナル敗退となったが、東京五輪金メダリストでX Games Japanでもチャンピオンに輝いた絶対的女王、四十住 さくら、東京五輪シルバーメダリスト開 心那に加え日本選手権2連覇の偉業を成し遂げた期待の新星 草木 ひなのが初の世界選手権でファイナリストに。
終始リラックスした表情で物怖じすることなく、世界で戦う舞台を楽しんでいるように感じる。
今大会は安定した強さを見せている開、勢いに乗る草木とは対照的に今一つ調子を上げ切れていない四十住がファイナルでどこまで修正するかが注目のポイントに。
ファイナルには、東京五輪銅メダリストで今大会優勝候補の一人、スカイ・ブラウンとローラ・タンブリングのイギリス勢。
国際大会で決勝常連のブライス・ウェットスタイン、グレース・マーホファー、ミナ・ステスのアメリカ勢の
この種目の強国3カ国での競いとなった。




[ 女子パーク決勝は0:00:00〜1:00:57 ]



[1本目]


3本のトライの中で最も良かったスコアで順位が決まる中、重要となる一本目。
ここである程度スコアをまとめることにより2本目、3本目で勝負をかける事がパークスタイルでは多い戦い方であり有利な戦い方だ。
まずはセミファイナルを8位通過したイギリスの新星、ローラ・タンブリングが緊張した表情で登場しラストトリックのみのミス、2本目以降に期待。
続く、ミナ(USA)は見事フルメイク。
四十住は3番手で登場。
1本目をフルメイクし、2本目意向で勝負を仕掛けたいところだが終盤のバックサイドヒールフリップインディグラブを成功後、体勢が悪く5050でバランスを崩しミス。2本目で巻き返したいところだ。
アメリカのグレイスとブライスは見事にフルメイクし有利な展開に。
コーピングトリックを得意とする日本の開は安定したテクニックでエアーとグラインド&スライドトリックで1本目をまとめここまでトップとなる85.00のハイスコアで2本目に繋がる良い流れでフルメイク。
これに続きたい草木はスピードとパワーあふれる滑りで完璧なバックサイド540エアーを含むフルメイクし、84.50と開続きこちらも2本目以降に期待がかかる。
セミファイナル1位で勝ち上がったスカイ・ブラウン(イギリス)はパワースピードと共に頭一つ抜け出た印象で最後のフロントサイド540まで完璧に成功、84.00と草木に続く3位につけた。




[2本目]

1本目でスコアメイクできなかったライダーは何としてもフルメイクさせ上位陣にプレッシャーをかけたい。
対象的に1本目でスコアメイクしたライダーは更なるスコアアップを仕掛けさらに優位に進められるか。
1本目で惜しくもラストトリックをミスしたローラ(イギリス)は最後のビッグウォールでロックンロールを体勢を崩しながらもなんとか成功しフルメイク74.80。
続くミナ(アメリカ)はスコアアップを狙いヒップでバックサイドフリップインディーグラブを狙うもミス。
何としても2本目でスコアメイクをしたい五輪女王の四十住はバックサイドヒールフリップインディグラブでミスし後がない状況に追い込まれた。
グレイス(アメリカ)は1本目同様安定した滑りで僅かにスコアアップし79.33。
トップ3に喰らいつきたいブライス(アメリカ)は難易度を上げた構成で途中フロントサイドノーズブラントでバランスを崩すもなんとか残しフルメイク、84.13で暫定3位につけた。
1本目を首位で折り返した開(日本)は軽快なライディングでラストトリックをアップデートしフロントサイドノーズグラインド180アウトをクリーンに成功させ86.66とスコアを伸ばし暫定首位をキープ。
草木(日本)は首位を狙い高さのあるバックサイドヒールフリップインディに挑戦するもこれを決め切れず3本目に全てをかける。
こちらも3位から首位を捉えたいスカイ(イギリス)は勝負に出る。
アリウープのビッグステルフィッシュグラブエアーからバックサイドエアーにヒールフリップを入れる大技を決め、勢いに乗るとバックサイドテールスライドからフロントサイド540も完璧に成功させ89.63のビッグスコアで暫定首位に躍り出る。
喜びもそこそこに盟友の四十住にエールを送る場面が印象的だった。


ちなみにスカイが当たり前のように決めているフロントサイド540は男女通じても彼女以外成功させているのをあまりみた事がないくらい難易度の高いトリックだ。
バックサイド540はお腹側に回るのに対してフロントサイドは背中側に、つまり着地点がほとんど見えない状態で高さのある大きなセクションで回転する恐怖心が付きまとうリスクも難易度も高い大技ということを覚えておいていただきたい。



[3本目]

勝負をかけた3本目。
イギリス期待の新星、ローラは2本目でフルメイクしラストトライで大幅な構成変更をし見事フルメイクしスコアを81.53と大きく伸ばし歓喜、暫定5位まで順位をあげ本人も納得のリアクション。
今後上位陣にどのように迫っていくかが楽しみなライダーの一人だ。
ミナ(アメリカ)も2本目でミスしたバックサイドフリップインディグラブを見事成功し80.33と大きくスコアを伸ばした。
後がない状況に追い込まれた絶対女王、四十住(日本)のラストトライ。
鬼門バックサイドヒールフリップインディグラブを成功、勢いそのままにブラントフロント180アウトにノーグラブのバックサイド360まで完璧にフルメイク、プレッシャーから解放されたのか四十住は感極まる場面も見せた。
2本ミスし相当な重圧がかかる中でのフルメイクは流石の女王ぶりを発揮した。
スコアも85.15と暫定3位まで一気に順位を上げた。
良い流れを受けグレースもフルメイク、ラストトリックのビッグセクションでのフロントサイド5050ではマッスルポーズを見せ会場や解説も大いに沸かせ、80.18とスコアを伸ばした。
表彰台を狙うブライス(アメリカ)要所でトリック難易度をあげフルメイクも84.40と暫定3位の四十住まで0.75届かず暫定5位に。
優勝するには2本目から2.97のスコアアップが求めらる開(日本)は序盤で得意のフロントノーズグラインドでまさかの失敗、暫定2位のまま今大会を終えた。
表彰台はもちろん、優勝を狙う草木も2本目同様バックサイドフリップで失敗し4位で今大会を終えた。
類稀なる度胸とスキルを持った14歳は今後世界の上位勢と互角以上に戦う日がそう遠くないと感じさせた今後が楽しみなライダーだ。
ウイニングランとなったスカイ(イギリス)は3本目も圧巻の滑りで、今大会唯一の90点台をマークし世界女王に輝いた。





今大会は東京五輪からパワー、スピード、高さ、全てにおいて一回り以上成長したように感じたスカイ・ブラウン(イギリス)が頭一つ抜き出た結果だったが、2位開(日本)から5位ブライス(アメリカ)まで2.26点差とかなり僅差にひしめき合い、ファイナリスト全員が80点台以上をマークと実力は拮抗している。
調子が上がらない中プレッシャーを跳ね返し3位表彰台を獲得は流石の一言、本来の実力のスコアを出せなかった四十住は次大会でどのように修正してくるのか。
また完成された滑りと高いコーピングテクニックでスキルアップし続ける開、スピードと高さを武器に日々進化し続ける草木らの日本勢も今後どのようにスコアを伸ばす構成の成功率を上げてくるかが注目だ。
パリ五輪予選は今大会が初戦なので順位がそのまま世界ランキングとなり、これまで四十住を追う立場だったスカイが今度は追われる立場として本大会までどのようにスキルアップしてくるのかも楽しみだ。
兎にも角にもスケートボード女子パークのパリ五輪予選はまだ開幕したばかりだ。




東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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