世界ランキングから考える、2024シーズンパリ五輪予選大会初戦「WST Dubai Street 2024」の見どころ | CURRENT

世界ランキングから考える、2024シーズンパリ五輪予選大会初戦「WST Dubai Street 2024」の見どころ

| 2024.03.05
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先週末のパーク種目に引き続き今週末、2024年シーズンのパリ五輪予選大会初戦となる「WST Dubai Street 2024」がアラブ首長国連邦のドバイにて開催される。昨シーズンは最終戦として世界選手権を東京で行い、日本人選手たちが男女共に素晴らしい快挙を果たして幕を閉じたが、オリンピックイヤーとなる今年は、パリ五輪本戦に向けてカウントダウンが始まる中でどんな戦いが繰り広げられるのだろうか。

なお今シーズンはパーク種目同様に、ストリート種目でもフェーズ2に該当し昨シーズンまでのフェーズ1終了時の世界ランキングポイントに基づいて選出された44名の選手に出場権が与えられる。ただしこれは世界ランキングの上位44選手ではなく、最大国枠等、オリンピック選考基準に基づいて選考された44選手となり、限られた選手だけが出場できるパリ五輪前の最終シーズンとなる。

そして今シーズンにはパリ五輪予選大会として最も得点配分の大きいオリンピック・クオリファイヤー・シリーズ(OQS)が2戦、5月と6月にて開催予定。なんと一大会で最大25万ポイントを獲得できることから、その大会を前に自分の現在地やコンディションを確認する上でも前哨戦として重要になるのが今回のドバイ大会だろう。

本記事では男女の現在の世界ランキング(2024年3月5日現在)を元に、今大会のCURRENT的見どころを解説する。

女子ストリート

オリンピック代表選考基準として世界ランキング20位以上、各国からは上位3名までがパリ五輪にへの出場権を獲得できる。また20位以上に同国から3名以上ランクインしている場合は、繰り下げで20名になるように出場権が割り与えられる。更に開催国枠や大陸枠などが考慮され22名がパリ五輪へ出場できるのだ。そして現在のランキングは以下の通りである。(2024年3月5日現在)

現在の世界ランキングを見ると上位20位以内に3名以上がランクインしている国は日本、ブラジル、オーストラリアの3ヶ国であり、その中で一番選手が多いのは昨シーズン同様に日本であるが昨シーズンを終えて現在計8名の日本人選手がトップ20に名を連ねている。そして続いてブラジルとオーストラリアが3名ずつという状況だ。

やはり今大会も引き続き目が離せないのが、日本人選手の出場権争いであることは間違いないだろう。昨年の世界選手権で織田夢海が優勝したことで、大きく得点を伸ばして世界ランキング3位の座を更に堅実なものにした一方で、赤間凛音は同大会で決勝6位だったものの得点を伸ばせず4位から5位に後退。その影響から6位の位置をキープしていた中山楓奈と7位へジャンプアップした吉沢恋と団子状態で競るような状態になっている。

なお現在の得点は赤間157,671ポイント中山141,774ポイント吉沢101,017ポイントであり、その得点差は赤間と比較すると、中山との差は15,897ポイント吉沢との差は56,654ポイントと今大会の結果によっては赤間中山、吉沢の3名による出場権争いが特に熾烈になると想像できる。そこに10位の伊藤美優、13位の上村葵、20位の藤澤虹ヶ可がどう食い込んでくるかにも注目だが、おそらく今大会はOQSに向けた前哨戦。ここで良い調子を掴んでおきたいところだ。

そんな日本人選手たちに立ちはがる強豪国の一角がブラジル。言わずと知れたスケートボード大国であり、世界最高のスケーターである世界ランキング2位のライッサ・レアウをはじめ、8位にはパメラ・ローザ、11位にはガビー・マゼットという世界的な快挙を残してきた実力者が他選手を差し置いて上位にランクインしている。特にレアウはつい先日パリで開催された「2024 SLS PARIS」では準優勝するなど昨シーズンから調子を維持したまま今シーズンに入ってることもあり引き続き現在ランキングトップの西矢や3位の織田をはじめ日本人選手たちにとってライバルであることは変わらない。ブラジル代表選手たちがどんな戦いを今回見せてくれるのかは注目だ。

そしてもう一つ、弱冠14歳のスーパースターであるクロエ・コベルが率いるオーストラリア。昨年は「X Games California 2023」にて女子ストリート最年少での金メダル獲得、SLSシリーズでは東京大会、シドニー大会での優勝など一気に世界最高のスケーターに仲間入りしたコベル。昨年12月に行われた世界選手権ではメダルを一歩逃し、ランでは自分の納得のいかない滑りに涙する様子も見られたが、今年は先日行われた「2024 SLS PARIS」では西矢や織田そしてレアウを抑えて見事優勝を果たすなど既に今シーズン絶好調の彼女が現在世界ランキング4位。そんなコベルに続いて17位にヘイリー・パウエル、18位にリブ・ラブレイスがトップ20にランクインしている。

さらに前述した選手たちに加えて個人的に注目しているのは、以前も紹介したアメリカのペイジ・ハインだ。女子選手では珍しい「スイッチ」スタンスでのトリックを得意とし、現在世界ランキング9位でアメリカ代表としては唯一トップ20にランクインしている彼女。昨年の世界選手権の際に左足首を痛めてしまった彼女だが、スケートボードの母国であるアメリカとしてはパリ五輪での活躍を期待しているに違いない。そんな母国の想いを背負う彼女が怪我から回復し今シーズンではどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。

またもう1人は、現在世界ランキング15位で中国のチェンシー・チー。現時点での世界ランキングトップ20の中ではコベルと同じ最年少の14歳であり、スケートボードキャリアまだ3年と短いものの、昨年はアジア選手権で優勝を収めるなど急成長を見せる彼女。昨年の世界選手権では8位と着実に成績を伸ばしている彼女がこのオリンピックイヤーで新たな快挙を見せるのか注目だ。

男子ストリート

一方で男子カテゴリーの勢力図としてはアメリカから5名と日本から6名がトップ20の半分を占める中、昨今のパリ五輪予選大会の決勝常連選手たちが名を連ねている。

そんな中、女子同様に今回のドバイ大会を含め今シーズンで壮絶な代表枠争いが予想されるのは日本だ。昨年は秋に怪我の影響でスイス・ローザンヌ大会をスキップしたものの、ローマ大会で2位となり世界選手権では自身初の世界タイトルを獲得したことで完璧なシーズンを過ごした白井空良が現在世界ランキング2位に、そんな白井に続く形で新世代の注目株である小野寺吟雲が5位、最近SLSをはじめ国際大会で顕著な結果を残している昨年の世界選手権準優勝の根附海龍が6位、そしてなかなか勝ちきれない昨シーズンを過ごしたものの、世界選手権で3位になりジャンプアップした東京五輪金メダリストの堀米雄斗が7位となり接戦となっている。

なお現在の得点は小野寺104,475ポイント根附99,809ポイント堀米96,017ポイントであり、その得点差は小野寺根附4,666ポイント、そして根附堀米との差は3,792ポイントとわずかな差であり今大会の結果によって順位が大きく入れ替わることも想像に容易い。そこに加えて10位の佐々木音憧、17位の青木勇貴斗の追い上げにも注目していきたい。

一方で日本と同様に出場権争いが激化すると考えられるのがアメリカだ。絶対王者と言っても過言ではないほど数え切れないほどの世界タイトルと優勝経験を持つナイジャ・ヒューストンが現在世界ランキング1位を保持している。昨年も世界選手権を除いて全てのパリ五輪予選大会で優勝を残しておりこのリードは大きなものになっている。そんな彼を追う形で続いているのは11位でパーク種目では世界ランキング1位となっているジャガー・イートン。14位には昨年の世界選手権5位のアレックス・ミドラー、16位にクリス・ジョスリン、20位にブライデン・ホーバンという順になっている。今大会では特にイートン以下の4名がどのように代表権を争っていくのかがポイントになるだろう。

また他国の選手として、筆者が注目している選手は2人いるのだが、1人目は前回も紹介したカナダのコルダーノ・ラッセルだ。他の選手とは一風違ったボードトリックを得意とする彼は、昨年からこのパリ五輪予選大会に出場したものの、大会を重ねるごとに成績を上げており現在は世界ランキング13位にランクイン。昨年の世界選手権の際には90点台を連発し、更なる可能性を感じさせた彼の今シーズンの活躍にも刮目だ。

そして2人目はフランスのオーレリアン・ジロー。現時点では世界ランキング3位である彼は、ギャップセクションを使った大きなジャンプの中に高難度トリックを加えるライディングが特徴的だが、2022年シーズンは世界選手権でタイトルを獲得し、昨年もコンスタントに決勝に残るも世界選手権は出場を見送った。今年の活躍が気になる彼は、早速先日行われた「2024 SLS PARIS」では優勝するなど既にその成長を見せ付けた。自国開催となるパリ五輪を控えてどんなパフォーマンスを今シーズン見せてくれるのか楽しみだ。

最後に

今大会はパリ五輪予選大会のフェーズ2における最初の大会となる。実際一部の選手は先日開催された「2024 SLS PARIS」にて今シーズン初戦を終えたが、それからわずか2週間のスパンを経て迎えるのが今大会。そしてこの後にはパリ五輪予選大会で最もポイント配分の多いOQSを控え、いよいよパリ五輪代表出場権争いはラストスパートへ入っていくが誰が幸先良いスタートを切るのか。

また筆者個人的には特に気になるのは日本人選手たちの出場権争いだ。一時期はフェーズ2への進出も危ぶまれると噂された五輪金メダリストの堀米雄斗が追い上げる一方で、同じく東京五輪代表であった青木勇貴斗が大苦戦するなど、ここ3年で日本国内での勢力図は男女共に変化している。誰が代表となってもおかしくない接戦で迎える2024年シーズン。一大会たりとも目が離せない。

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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