X GAMES CALIFORNIA 2023 WOMEN’S SKATEBOARD PARK | CURRENT

X GAMES CALIFORNIA 2023 WOMEN’S SKATEBOARD PARK

| 2023.07.26
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アメリカ合衆国のカリフォルニア・ベンチュラで開催されている「X GAMES CALIFORNIA 2023」にて、現地時間2023年7月23日午前10時からスケートボード女子パークの準決勝及び決勝が行われた。

今大会は従来の大会とは異なるフォーマットの中で競われ、準決勝からハイレベルな試合展開。前回の「X Games Chiba 2023」のメダリストであるルビー・リリー(アメリカ)や藤井雪凛(日本)が、観客や実況を巻き込んで沸かせる技ありのランを見せるも、上位3名には僅かおよばず4位という結果で準決勝敗退するといった非常に厳しい戦い。この時点で決勝も一筋縄ではいかない拮抗した展開になることは容易に想像できた。

決勝は前日開催された男子カテゴリー同様に、準決勝を勝ち上がった各3名の合計6名で競われる形。その6名の枠には東京オリンピック銀メダリストである日本の開心那や、前日に開催されたバート種目で金メダルを獲得したオーストラリアのアリサ・トゥルー、そして今年の日本オープンで優勝した長谷川瑞穂といった10代前半の若手の実力者たちが中心となり名を連ね、次世代のスーパースター誕生を感じさせる一戦となった。

スタートリストはブライス・ウェットスタイン(アメリカ)、 グレース・マーホーファー (アメリカ)、 長谷川瑞穂(日本)、 ライカ・ベンチュラ (ブラジル)、心那(日本)、 アリサ・トゥルー(オーストラリア)の順。

そして決勝フォーマットは15分間のジャムセッションの中で、一人40秒のランを複数本滑走した上で自身の最高得点のランが最終スコアとなるベストラン採用方式に。

今大会ではコース上に用意されたセクションを巧みに活用しながら、ハイエアーを組み込み高難度トリックをメイクすることが求められ、総合的なスキルをベースにクリエイティビティとスタイルを披露することが勝敗を分ける要素となった。

大会レポート

【ラン1本目】

今大会のラン一本目は、全体的に各選手が比較的良い形でランをまとめている印象を感じた。そんな決勝戦の火蓋を切って落としたのは、常にスケートボードを心から楽しむ様子を我々に見せてくれるスタイン(アメリカ)。どこか準決勝よりスピードが上がっている様子の彼女はコーナーセクションでのフロントサイド・フィーブル to フェイキーや、クオーターでのフェイキー・キャバレリアルなどコース全体を大きく使ったバラエティ豊富なランを見せた。そんな彼女のランは79.33ptの評価で全体に勢いをつけた。

その勢いに上手く乗り80点台をマークするランを見せたのはマーホーファー(アメリカ)。パークだけではなくストリートもこなす彼女は他の選手よりも多くのトリックバラエティを持つ。彼女はコーナーセクションでの完璧なフロントサイド・スミスグラインドのメイクを始め、中盤は中央のクオーターでのエッグプラント、最後はボックスジャンプ横のレールでバックサイド・スミスグラインドなどフルメイクでランを終えて81.66ptをマークして、若手選手たちを前に20代ベテランの安定感を見せた。

一方で、今大会最年少12歳の長谷川(日本)も見事なランを見せる。全体的に勢いの良いライディングを見せる中、ディープエンドから飛び出してクリーンなキックフリップインディーをメイク。その後もコース全体を使いながらランを進め、最後はまたディープエンドでこちらも完成度の高いジュードー・エアーを決めてフルメイクでランを締め括り82.66ptをマークした。

ラン終了後は大きくガッズポーズをしては観客側にも歓声を求める様子も見られた。彼女も今後は女子パーク種目の中心人物の一人になることは間違いないだろう。

そして何より、今大会で終始絶好調で1本目から群を抜いて強さを見せたのがトゥル(オーストラリア)だ。全体的にスイッチ系のトリックを多く取り入れている彼女は、コース上のライン取りも他の選手とは異なり評価が高い。また中盤では見事なマックツイストをディープエンドでメイク。終始複数の高難度トリックをメイクし後続を引き離す88.33ptというスコアをマークした。

【ラン2本目】

ラン2本目は1本目とは対照的に全体的にミスが多い展開。1本目で高得点を叩き出したトゥルーもクオーターでトリックミスをして22.00ptでランを終えるような展開。

その中でも今大会で特に大苦戦を強いられたのが(日本)。今まで出場してきたX Gamesでは一度もメダルを逃したことがない前回の「X Games Chiba 2023」の覇者である彼女だが、今回はどこか奮わない様子。1本目の80点台に乗らない76.66ptの評価のランで表情が曇る中、ラン2本目は終盤のボックスジャンプ横のレールでトリックにトライするも転倒し、スコアを58.33ptとして追い込まれる状況に。

最終滑走者であるトゥルーが2本目を終えた時点で残り時間が4分ほどであったため、次の3本目がラストランとなる状況。開が逆転するには次のラスト1本で決め切らないといけない難しい展開となった。

【ラン3本目】

運命のラストトライとなった3本目は、トゥルーを残して各選手が60点台という結果で順位には変動なし。の最終滑走を前に暫定トップ3名はトゥルー、長谷川、マーホーファーの順となった。

背水の陣でラストランを迎えたは、全体的に一定のスピード感を持った良いフローでライディングを進めていき、中盤ではクオーターでフロントサイド・ノーズグラインド to フロントサイド・リップスライドをメイク。そして最後は2本目でミスのあったボックスジャンプ横のレールへ飛び乗り、見事50-50を決めて会場を盛り上げた。気になるスコアは80.33ptと惜しくも3位のマーホーファーの81.66ptを超えることはできず表彰台を逃したが、ラン終了後の彼女は笑顔で3本目のランを経てどこかほっとしているようにも見受けられた。

この瞬間、トゥルーの金メダル獲得が決まったが、最終滑走者のトゥルーはウィニングランのラスト1本で更に周囲を驚かせるランを披露。クオーターでのマックツイストを始め、パーク種目では岡本碧優のメイク以来となる540・ボディーバリアルをディープエンドで決める。締め括りはスイッチスタンスでのボックスジャンプの飛び切りという金メダル文句無しのウィニングランで91.00ptをマークし自身の優勝に華を添えた。

なおこのパーク種目の優勝によって1大会に2種目での金メダル獲得という快挙を達成。ちなみにこの快挙は「X Games Los Angeles 2020」でブラジルのレジェンドスケーターであるファビオラ・ダシルバが達成した時以来のことでなんと23年ぶりの大記録となった。

【大会結果】

優勝 アリサ・トゥルー (オーストラリア) 91.00pt
2位 長谷川瑞穂 (日本) 82.66pt
3位 グレース・マーホーファー (アメリカ合衆国) 81.66pt
4位 開 心那 (日本) 80.33pt
5位 ブライス・ウェットスタイン (アメリカ合衆国) 79.33pt
6位 ライカ・ベンチュラ (ブラジル) 78.66pt

最後に

今大会を通して一番に感じたのは急激な競技レベルの向上だった。ただでさえ高難度トリックだけではなく総合的なスキルが求められる中で、今まで選手たちが大会でメイクしたことのないトリックを取り入れてきたり、セクションを巧みに活用することで周りが想像しない角度から高難度トリックをメイクするなど、表彰台に上がる選手たちはもう12段階上のパフォーマンスを見せてきた印象があった。その中で選手同士のメンタル面の駆け引きもあるかとは思うが、それすらも上回ることのできる技術と戦略の裏付けが彼女たちの努力から生まれているのだと感じた。

なお、今回は主に10代前半の若手選手たちの台頭が顕著だったが、実はスカイ・ブラウン(イギリス)は千葉県で開催されたサーフィンの国際大会「WSL QS3000」への出場により欠場。そして四十住さくら(日本)も5月上旬に負傷した右膝が完治していないことから欠場ということでパーク種目のスーパースターである彼女たちが不在の中で行われた大会でもあるのだ。

今後は今回のメダリストがスーパースターたちを相手にどのような戦いを繰り広げるのか期待していきたい。そして今回惜しくも悔しい結果に終わった日本人選手たちがパリオリンピック出場枠争いも含めどんなパフォーマンスを見せてくれるのかも気になるところだろう。男子カテゴリー同様に今後も国内外での女子スケートボードパークシーンにも注目だ。

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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