X GAMES CALIFORNIA 2023 WOMEN’S SKATEBOARD STREET | CURRENT

X GAMES CALIFORNIA 2023 WOMEN’S SKATEBOARD STREET

| 2023.07.25
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アメリカ合衆国のカリフォルニア州はベンチュラで開催されている「X GAMES CALIFORNIA 2023」にて、現地時間2023年7月22日午前10時からスケートボード女子ストリートの決勝が行われた。

近年急激に競技レベルが上がっており、特に10代前半の活躍が目ぼしいのがこのスケートボード女子ストリート種目。今大会は優勝候補のライッサ・レアウ(ブラジル)が渡航の問題から大会日に間に合わず欠場というハプニングもあったが、全体としてX Gamesならではのフォーマットもあってか過去のX Games金メダリストや世界チャンピオンの経験を持つベテランスケーターたちも若手に負けずに勝ち上がるなど、選手たちそれぞれのスキルと経験が光る見ごたえのある決勝戦となった。

今大会の決勝メンバーには、オリンピック金メダリストの西矢椛や、周りの選手がやらないユニークな技を兼ね備える2023年世界チャンピオンの赤間凛音、そして本カテゴリー最年少金メダリストを狙うオーストラリアのクロエ・コベルといった現在世界のスケートボード女子ストリート種目をネクストレベルに引き上げる若手スケーターたち。また一方で女子ストリート種目ではもうレジェンドといっても過言ではないブラジルのレティシア・ブフォニや東京オリンピックアメリカ代表のマライア・デュランなどが決勝に駒を進め若手を迎え撃つような構図となった。

そんな決勝が争われる大会会場は、学校を模したたくさんのセクションが設置された大きなコース。高難度トリックのメイクも重要だが、いかにこれらのセクションを上手く活かしたランを45秒間でまとめられるかが勝敗を左右した。

今大会のフォーマットはベストラン採用方式。一人45秒のランに3回トライし、最も高い得点のランをベストスコアとして採用するという、ベストトリック抜きの昨今のパリオリンピック予選大会とは異なるフォーマットの下でメダル争いが繰り広げられた。

大会レポート

【ラン1本目】

やはり1本目からしっかりランをまとめ高得点をマークしたのは、赤間・西矢・コベルといった優勝候補の3名。各選手がなかなか得点に繋げられずにいる中、赤間は270・バックサイドリップスライドでランを始め、中盤ではオーバーザギャップでのトリックで転倒が見られるも、最後にダブルセットのステアで決めたフロントサイド180スイッチフロントサイド5-0グラインドを見事メイクし転倒分を回収。見事82.00ptをマークして80点台に躍り出た。

そこに続いたのはコベル(オーストラリア)。ピックニックテーブルセクションでの50-50 to キックフリップアウトで会場を沸かせ、その後もスイッチスタンスでのフロントサイドボードスライドや、ダブルセットのステアのレールでも50-50をメイクし83.66ptをマークし赤間を超える得点を出した。

さらに彼らを超えるランを見せたのが西矢。リラックスした滑りで何を見せるかと思いきや低いバンクから看板へ飛び乗り5-0グラインドをメイク。その後クルックドグラインドをピックニックテーブル横のベンチで魅せてフルメイクでランを終えた。ピース姿を見せるほど余裕がある彼女についたスコアは86.66ptで暫定1位で2本目を迎えた。

【ラン2本目】

トップ三選手を除いて、1本目でハイスコアを残せていない選手たちにとってはラスト1本への望みをかける前に、メンタル面を安定させるためにもなんとか得点に繋げておきたいラン2本目。

ここで最終ランへ希望を持たせる良いライディングを見せたのが赤間や西矢に続いて決勝に残った前田日菜。5月に開催されたUPRISING TOKYOのベストトリックの覇者である彼女が、優勝をもぎ取ったキックフリップを中心にランを展開。グラインドから傾斜に向けて見事な50-50 to キックフリップアウトをメイクし、その後もオーバーザギャップをキップフリップでトランスファーをメイク。惜しくもラスト5秒前に小さなステアでのキックフリップでミスをし、実況も残念そうに声をあげたが前田は1本目を大きく上回り78.66ptをマークした。

そんな前田の直後に滑走したのは、11度のX Gamesメダル獲得を経験しているブラジルのブフォニ。最近はオフロードのカーレースを主戦場としている彼女が今シーズン初の大会として「X GAMES CALIFORNIA 2023」に出場したが、なかなか思うようなライディングができず大苦戦。およそ6フィートの高さからのオーリーのドロップオフや、フロントサイドフィーブルグラインドを見せるも終盤にトライしたダブルセットのステアでのトリックでミス。1本目の60.33ptを上回れないでいた。”Next run!”と自分を鼓舞する様子も見られたがその表情にはどこか焦りみたいなものも感じられた。

そして同じく苦戦を強いられたのがデュラン(アメリカ)。最近はビデオパートの撮影が多い彼女だが、本戦ではキックフリップフロントサイドボードや、持ち技の一つでもあるハードフリップのメイクが決まらずマライアらしくないミスが多く、本人もなかなか納得できない様子だった。

またこのランで自身最高得点を出したのが、わずかスケートボード歴4年のX Gamesルーキーであるシロー・カトリ(アメリカ)。ダブルセットのステアのレールでフロントサイド50-50を決めた彼女は、その後コース中央に設置された看板へ飛び乗りフロントサイドノーズスライドをメイク。初めてのX Games出場とは思えない堂々した滑りで78.00ptをマークした。

なにより、そんな彼らを上回るランでメダル争いの展開を大きく変えたのは赤間。1本目では転倒もあったためもちろん2本目では更なるスコアアップが期待された彼女だが、全体的に1本目を上回るランを見せた。1本目同様に270・バックサイドリップスライドでランを始めた彼女は、完成度の高いバーレーグラインドや180・フロントサイドノーズグラインド・ハバを決めてフルメイクでランを終えスコアを87.66ptと暫定1位にジャンプアップ。ラン終了後にはガッズポーズをするほど彼女自身も納得した1本だったようだ。

その後、コベルも西矢も赤間の点数を超えることができず、暫定トップが赤間、2位が西矢、3位がコベルという順で運命のラストランを迎える展開に。

【ラン3本目】

ラストランとなる3本目は、やはりトップ三選手がメダルの色を争う展開。ただこのランで印象的だったのは今回2度目のX Games出場となったペイジ・ヘイン(アメリカ)のライディング。スイッチスタンスでのトリックを得意とする彼女は力の抜けたリラックスしたランを見せる。バックサイドスミスグラインドをクリーンにメイク。そして終盤にはブフォニがオーリーでドロップオフした6フィートギャップでスイッチ180にトライ。惜しくもメイクとはならず得点には結び付かなかったが今後への可能性と存在感を示すパワフルなランだった。

そして迎えた最終局面。赤間は残念ながら2本目を超える得点を残せず、暫定2位の西矢に1点差、暫定3位のコベルに4点差とリードを広げられず、残すは西矢とコベルの結果次第となった。

ここで大逆転のランを見せたのがコベル。短いスクエアレールで決勝初メイクとなる50-50 to キックフリップアウトで会場を沸かせ、その後もダブルセットのステアのレールでフロントサイド50-50を決め切るなどフルメイクでランを終える。今大会最高のランを確信したコベルは会場内に設置されたベルを鳴らし喜びをあらわにした。ジャッジが付けた点数は堂々の90.00pt!その点数には思わず本人も頭を抱えていた。

最後は暫定トップのコベルが緊張しながら見守る中での西矢のラストラン。プレッシャーを跳ね除けて良いランを見せるかと期待されたが、コース中央に設置された看板へ飛び乗っての5-0グラインドで転倒。この瞬間、コベルの逆転優勝が決まった。西矢も残念そうではあったが転倒後にバックサイドクルックドグラインド to キックフリップアウトをピックニックテーブル横のベンチで魅せて会場を沸かせる姿も見られた。

なお今回の金メダル獲得によってコベルは同カテゴリーにおける最年少金メダリスト記録を更新。なんと弱冠13歳5ヶ月で金メダル獲得という快挙だ。

【大会結果】

優勝 クロエ・コベル (オーストラリア) 90.00pt
2位 赤間 凛音 (日本) 87.66pt
3位 西矢 椛 (日本) 86.66pt
4位 前田 日菜 (日本) 78.66pt
5位 シロー・カトリ (アメリカ合衆国) 78.00pt
6位 マライア・デュラン (アメリカ合衆国) 67.00pt
7位 ペイジ・ヘイン (アメリカ合衆国) 64.00pt
8位 レティシア・ブフォニ (ブラジル) 60.33pt

最後に

今大会を通じて最初に感じたことはやはり10代前半の若手スケーターの台頭。今までは若手スケーターは小柄で身体が軽いからことがトリッキーな大技の習得のアドバンテージを持っている感覚だったが、今のトップ選手たちは高難度トリックだけではなく用意されたセクションを上手く活用しながら技を繰り出すという本当の意味でのストリート力にさらに磨きがかかっていた

また今回は2位から4位までを日本人選手勢が占めるという結果で、改めて日本人スケーターたちの揺るがぬ強さみたいなものを目の当たりにした。一方で今回の結果が、国内での今後のパリオリンピック出場枠争いを激化させるのも間違いないだろう。来月には国内初開催となるSLSもあり、今大会で功績を残した赤間と西矢の出場も決まっている。ノリに乗る彼女たちをいかに抑えていくかがパリオリンピック出場を目指す日本人選手たちに必要となる今後の課題かもしれない。パリオリンピックに向けて激化していく国内外の女子ストリートカテゴリーに今後も注目だ。

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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