世界の新たな扉を開ける。永原悠路が日本人選手初の快挙!「WST WORLD CUP ROME 2025」パーク男子決勝 | CURRENT

世界の新たな扉を開ける。永原悠路が日本人選手初の快挙!「WST WORLD CUP ROME 2025」パーク男子決勝

| 2025.06.11
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2025年6月1日(日)〜6月8日(日)にイタリアのローマ・オスティアで「WST WORLD CUP ROME 2025」 が開催された。昨年のパリオリンピックでは日本人代表選手として永原悠路が出場した中で、3年後に開催されるロサンゼルスオリンピックでは更なる出場選手の輩出が期待されている、現在競技レベルの向上著しい日本の男子パークスタイルシーン。その3年後の大舞台に向けた選考レースが今大会からスタートした。世界から強豪選手たちが群雄割拠し常にトップ選手の面々が変わる競争率の高いこの男子パークスタイル種目にて、日本人選手が多くの出場枠を手にするにはコンスタントに上位の結果を残すことが求められるので、特にワールドカップはどれも重要な大会であることは言うまでもないだろう。

今大会には前回のオリンピアンである永原悠路をはじめ、国際大会派遣選手である猪又湊哉櫻井壱世志治群青天野太陽の5人が出場。これからの日本の男子パークスタイルシーンを牽引する立役者たちが、世界から全90名の選手が集まるこのワールドカップの舞台で熾烈な戦いを見せた。そしてその中で半分の選手が振り落とされる予選を5名全員が通過するなど日本人選手の強さとレベルの向上を知らしめた一戦でもあっただろう。

そして本決勝は準決勝を勝ち上がった合計8名で競われ、日本からは永原悠路猪又湊哉が駒を進め、スタートリストはペドロ・カルバーリョ(ブラジル)ルイス・マリアーノ(ブラジル)永原悠路ルイジ・チニ(ブラジル)アレッサンドロ・マッザーラ(イタリア)猪又湊哉ギー・クーリー(ブラジル)エゴイツ・ビフエスカ(スペイン)の順となった。

本記事では各ランの中で編集部として注目した選手のライディングを厳選してピックアップ。大会の結果と共にお伝えする。

大会レポート

【ラン1本目】:WSTで初の決勝進出を果たした猪又湊哉が見せた見事なライディング

オリンピック選考大会である今大会の決勝は、女子同様に45秒のラン3本目のうち1本のベストスコアが採用される従来の形式に加えて、3本目終了時のトップ5のみに与えられるラスト1本「ゴールデンラン」という新ルールが追加された新たなフォーマットで争われた。今回からは3本目までにトップ5に値するスコアを保持していればもう一本スコアアップのチャンスが与えられるため、いかに前半でハイスコアを残して上位にランクインしていられるかが、自身のハイエストスコアを更新するチャンスとなるゴールデンランを掴むために重要なポイントとなる。

そして今大会のラン1本目で筆者が特に注目したのは猪又湊哉。まず彼の特徴として注目したい点は、バートのバックグラウンドを持つことから繰り出されるハイレベルな回転技とフリップトリック。準決勝では3位で決勝進出を決めるなどそのトリックセレクションのレベルの高さは世界最高峰。決勝でも全体的にスピードを落とさず安定したハイエアーからトリックを展開。1本目ではディープエンドでの「バックサイド540」と皮切りに「アリーウープヒールフリップインディグラブ」、「ボディバリアル540」そして「ステイルフィッシュグラブ720」などを見事にメイクしていきと91.12ptとハイスコアをマークした。

今大会では暫定3位でゴールデンランに挑んだもののフルメイクできず最終的に5位入賞という結果になったが、今回ゴールデンランでメイクできなかった「バリアルフリップインディグラブ」を含めフルメイクでランを終えていれば十分優勝を狙えたことであろう。彼は女子で優勝した長谷川瑞穂同様にバーチカルとの二刀流で日本を代表するトップライダー。バートでは既に安定した強さを見せ始めているが、ロサンゼルスオリンピック出場への強い思いを持っているため、このパークスタイルでの選考レースでもしっかり成績に繋げてくるだろう。
とはいえ、今回の決勝5位は自身の最高順位。伸び代しか感じない彼のこれからの活躍に注目だ。

【ラン2本目】:バートの世界王者が、パークスタイルでも見せた!ギー・クーリーの見事なラン

2本目では大半の選手がライディング中にミスしたことでスコアが伸び悩む展開となった。ゴールデンランという新しいルールが敷かれていることでトップ5に残ることがプレッシャーになったのか、3本目を迎える前にこの2本目では高得点を叩き出したいという気持ちが裏目に出てしまったようにも感じられた。

ただこのランで唯一スコアアップして見せたのが、今回筆者が注目している選手であるバートを主戦場に同種目の世界王者であるギー・クーリーのランだ。1本目からパークスタイル史上初メイクとなった「900」を決めるなどバートで培われたトリックセレクションをこのパークスタイルでも見せた。

1本目で既に91.82ptをスコアした彼は今回のランでさらにそのスコアを塗り替える。多くの選手がメイクに苦戦を強いられていた、ディープエンドでの「キックフリップボディバリアル540」を決めると、同じくディープエンドでの「バックサイドノーズグラインド to テールスライド」など回転技とグラインドトリックを見事にメイク。そして今回もディープエンドでの「900」を決めフルメイクでランを終え92.01ptをマークした。パークスタイルでの大会出場経験は少ないはずの彼だが、今までバートで培ってきた技術を見事にパークスタイルでの自分のライディングに落とし込んでくるところは脱帽だった。

今回ゴールデンランではスコアアップできずこの2本目のランが最終成績となり3位という結果に終わったが、このバートの世界王者の参戦は今後の選考レースで大きな波乱を巻き起こすことだろう。バートだけではなくパークスタイルでの彼の活躍もチェックしていきたい。

【ラン3本目】:前半のミスに囚われず掴み取ったゴールデンランの切符、永原悠路のライディング

決勝メンバー全員が挑めるランとしてはラストとなった3本目は、ゴールデンランを控える中でトップ5の当落線上にいる選手にとっては大事な一本ということもあり是が非でも決めたいところ。特にトップ5以下の健闘が見られる展開となった。

そんな3本目のランで特に注目したのは永原悠路のラン。日本人男子選手唯一のパリオリンピック出場者で実力は折り紙付きの彼だが、1本目では開始直後に転倒。2本目でもドロップ直前で板が滑り失敗という思いがけないミスに見舞われ大苦戦を強いられていた。永原が表彰台に上がるにはこの3本目でトップ5に残りゴールデンランに進む以外道はなくこの一発勝負を決め切る必要があった。

尋常じゃないプレッシャーの中で迎えたこの3本目のランではプレッシャーを押し除ける素晴らしいライディングを披露。クオーターのトランスファーでの「キックフリップインディグラブ」からディープエンドでの「キッックフリップボディバリアル」。ボルケーノでの「バックサイド360」そして最後はディープエンドでの「スイッチキャバレリアルディザスター」などをハイエアーと共に決め切り90.21ptをマークし暫定5位とゴールデンランに望みを繋いだ。

【ゴールデンラン】:日本の新時代を感じさせるワールドカップ初メダル。永原悠路のベストラン 。そして現れたスペインから若手の超新星エゴイツ・ビフエスカのウィニングラン

いよいよ迎えたラスト1本となるゴールデンラン。トップ5として進出したのは永原悠路アレッサンドロ・マッザーラ猪又湊哉ギー・クーリー、エゴイツ・ビフエスカ。このゴールデンランでかなり順位は左右される結果となったのだが、ここでは2名の選手に注目して紹介したい。

まずは暫定5位の位置からラストランに挑んだ永原悠路。前述した通り、3本目のスコアによりギリギリ滑り込んだこのゴールデンランだったが彼の中では完全に吹っ切れた様子で今大会一番のランを見せた。3本目のランをアップデートした中で、特に同じディープエンドの中で見せたトリックアフタートリックの「キックフリップインディグラブ」からの「キックフリップボディバリアル」や、完成度を上げたボルケーノでの「バックサイド360」 そして最後は「フェイキーキャバレリアルディザスター」の後に「フロントサイドブラントスライド」を追加し文句なしのフルメイクでランを終えた。スコアも92.30ptと大きく伸ばして自身初の表彰台を2位という順位で獲得して見せた。

決勝1本目から振り返ると短い時間の中で尋常じゃないプレッシャーがあったと思われるが、しっかり修正して結果に繋げてくるところは本当に見事だった。ロサンゼルスオリンピックに向けて幸先の良いスタートを切った永原の今後の活躍にも大いに期待だ。

そして今回最も筆者を驚かせたのはスペインの超新星、弱冠14歳のエゴイツ・ビフエスカだ。1本目から終始スピードが落ちないフローの中で繰り出される高難度トリックの数々で構成されたランを見せ92.54ptをマークすると最後までこのスコアを守り切りゴールデンランを前に優勝を確定させた。

そんなゴールデンランではさらにランをアップデートさせて完全優勝。ディープエンドでの「メロングラブ540」や「ステイルフィッシュグラブ540」、「バックサイドテールスライドショービットアウト」、そして「フェイキー720」といった幅広い高難度トリックコンビーネーションを披露。最後までフルメイクで綺麗に決め切ると94.50ptにスコアアップして追随を許さない形で優勝を決めた。ライディングを終えた瞬間に他の選手たちもペットボトルの水をシャンパン代わりに振りかけてライバルであり仲間の勝利を祝った。

大会結果

優勝:エゴイツ・ビフエスカ(スペイン)94.50pt
2位:永原悠路(日本)92.30pt
3位:ギー・クーリー(ブラジル)92.01pt
4位:アレッサンドロ・マッザーラ(イタリア)91.84pt
5位:猪又湊哉(日本)91.12pt
6位:ルイス・マリアーノ(ブラジル)89.96pt
7位:ペドロ・カルバーリョ(ブラジル)75.56pt
8位:ルイジ・チニ(ブラジル)39.63pt

最後に

今大会を通して筆者が感じたのは、今までの世界トップ選手たちの牙城が崩れかけているところから始まる新たな時代の幕開けだ。今大会はパリオリンピック金メダリストのキーガン・パルマーや、同大会銀メダリストのトム・シャーは不在だったとはいえ強豪選手たちがシードから出場する中で、多くの選手が準決勝で姿を消す中で今大会では日本人選手勢を含めて比較的に今までとは違う顔ぶれが決勝で見られたと思う。

一方で、前述したが日本人選手勢にとっては世界に競技レベルの向上を大きく知らしめた一戦になったことは間違いない。そもそも決勝に日本人選手が2名進出することが初めてのことであり、その中で永原悠路が達成した日本人男子選手初の準優勝。今後の日本の男子パークスタイルシーンの世界的な評価が変わるきっかけになったことは間違いないだろう。また今回惜しくも準々決勝で敗退してしまった櫻井壱世志治群青天野太陽の3名に関しても永原猪又に引けをとらない実力者であるため今後が楽しみだ。

そして女子決勝記事でも触れた部分だが、やはり男女共に最近はバートを主戦場に持つ選手たちの活躍がより顕著になってきた。今まではその代表としてパリオリンピック銀メダリストのトム・シャーや同じくアメリカ代表のテイト・カリューが挙げられたが、そこに追随するように今回猪又湊哉ギー・クーリーも現れてきた。改めて今後のパークスタイルのトリックレベルやライディングレベルの向上に、バートが与える要素が大きくなっていることもより確信的になってきたと感じる。

今回、3年後に控えるロサンゼルスオリンピックに向けて動き出した選考レースの第1戦で見られた、新時代の台頭と日本人男子選手たちのネクストレベル。日本人選手勢がロサンゼルスオリンピックへ何名出場できるようになるのか彼らの挑戦に注目ながら、一方で世界レベルで男子パークスタイルの勢力図がどのように変わっていくのかもチェックしていきたい。

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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