Road to LA 2028がスタート!新たな時代の開幕を感じさせるワールドカップ1戦目「WST WORLD CUP ROME 2025」パーク女子決勝
2025年6月1日(日)〜6月8日(日)にイタリアのローマ・オスティアで「WST WORLD CUP ROME 2025」 が開催された。つい昨年パリオリンピックが終わったばかりだが、次は3年後に開催されるロサンゼルスオリンピックに向けて出場権およびシード権をかけた選考レースが今大会からスタート。強豪集まる日本人選手勢にとって狭き最大3名の代表枠を獲得する上で、このワールドカップひとつひとつの大会が非常に重要となってくる。
今大会にはオリンピックメダリストである四十住さくらや開心那をはじめ、国際大会派遣選手である長谷川瑞穂、草木ひなの、菅原芽依、貝原あさひ、菅原琉衣、藤井雪凛、小川希花といった国内フルメンバーが出場。世界ランキングトップ5及び前回大会トップ3に該当した四十住、開、長谷川、草木はシード権を持っているため準々決勝からの出場となったが、世界から全66名の選手が集まる中で凌ぎを削る戦いを見せた。
そんな本決勝は準決勝を勝ち上がった合計8名で競われ、スタートリストはイサドラ・パチェコ(ブラジル)、草木ひなの、四十住さくら、長谷川瑞穂、アリサ・トルー(オーストラリア)、ナイア・ラソ(スペイン)、ナナ・タブレット(フランス)、開心那の順となった。
本記事では各ランの中で編集部として注目した選手のライディングを厳選してピックアップ。大会の結果と共にお伝えする。
大会レポート
【ラン1本目】

オリンピック選考大会である今大会の決勝は45秒のラン3本目のうち1本のベストスコアが採用される従来の形式に加えて、3本目終了時のトップ5のみに与えられるラスト1本「ゴールデンラン」という新ルールが追加された新たなフォーマットで行われた。フォーマットの基本ベースとしては変わらず、一度ボードからを落ちた時点でランを続行できなくなるのだが、今回からは3本目までにトップ5に値するスコアを保持していればもう一本スコアアップのチャンスが与えられる。前半でハイスコアを残せておくと合計4本のランに挑戦できるという以前より自身のハイエストスコアを更新しやすい新フォーマットだ。
そして今大会のラン1本目で筆者が特に注目したのは開心那。まず彼女の特筆すべき点は、幅広いトリックバリエーションとレベルの高いグラインドトリック。全体的にスピード感のあるまとまったフローで余裕を感じさせるスタイルで一つ一つ丁寧にトリックをこなしていく彼女。1本目では多くの選手がフルメイクできず苦戦を強いられる中、開は得意のグラインドトリックを中心にランを構成。コーピングでの「バックサイドノーズグラインド」や「バックスミスグラインド」、「バックサイドクレイルスライド」などを安定してライディングしていきと88.03ptと暫定トップスコアをマークした。
今大会では最終的に3位入賞という結果になったが、2本目以降も冷静にトリックをアップデートさせていきスコアを伸ばしていく姿は、やはりオリンピックという大舞台での2度の銀メダル獲得と世界ランキング1位を保持し続けた経験から来る圧倒的なメンタルコントロールとそれを支えるスキルの賜物と感じられた。まだ今シーズンは始まったばかり。今後どのように自身のスキルを高めて結果に繋げてくるのかが気になる選手の一人だ。
【ラン2本目】

2本目では、1本目でフルメイクできずにスコアが伸ばせなかった選手たちが大きく順位を上げる展開となった。やはり体が温まってきたからか、この辺りから怒涛の高難度トリック合戦が始まっていく。選手としてもゴールデンランに向けてトップ5に残るためにも、この2本目のランでは高得点を叩き出したいという強い気持ちもあったことだろう。
そしてこのランで筆者が注目したのは、昨年まさにスケートボード・パークスタイルの顔となっていたパリオリンピック金メダリストのアリサ・トルーのランだ。バーチカルでも活躍している彼女が持つトリックセレクションはパークスタイルでも健在。
今回のライディングでは「バックサイド540」の回転技や、「キックフリップインディグラブ」といったフリップなど高難度トリックを次々とメイク。そしてそんな中で決めて見せたのがディープエンドでの「スイッチマックツイスト」。大会の実況でも伝えられたがこのトリックは女子では大会で世界初とのこと。このトリックが大きく評価され92.43ptという高得点をマークし暫定トップに躍り出た。今年も彼女の年になるのか?大きな期待を感じさせるランとなった。
【ラン3本目】

決勝メンバー全員が挑めるランとしてはラストとなった3本目は、大半がスコアアップできない難しい展開に。特にゴールデンランを控える中でトップ5の当落線上にいる選手にとってハラハラした展開が続いた。一方で現時点でほぼトップ5入りを決めていた選手も順位が変わるなど、最終決戦はやはりゴールデンランに託されるような形で進んでいく。
そんな3本目のランで特に注目したのは長谷川瑞穂のラン。トルーと同じくバーチカルでの活躍が華々しく今月行われる「X Games Osaka 2025」のバーチカル女子への出場も決まっている彼女。バーチカルで鍛えられたトリックセレクションを活かし、1本目・2本目と1本ずつ確実にスコアアップして見せた中、最終ランでは素晴らしいライディングを披露。クオーターのトランスファーでの「フロントサイドジュードーエアー」からディープエンドでの「バックサイド540」や「キックフリップフロントサイドエアー」、そして最後はボルケーノでの「アリウープエアー」などを綺麗に決めて92.80ptをマークし暫定1位にジャンプアップ。大会初優勝へ大きく弾みをつけるランに自身も喜びが隠せない様子が印象的だった。
【ゴールデンラン】
そして迎えたラスト1本となるゴールデンラン。現時点でトップ5となった草木ひなの、ナイア・ラソ、開心那、アリサ・トルー、長谷川瑞穂が進出することとなった。ゴールデンランでもほとんどの選手がスコアをアップデートし最後まで結果が分からない展開にもつれ込んだ。ここでは2名の選手に注目して紹介したい。

まずは暫定5位の位置からラストランに挑んだ草木ひなの。1本目と3本目ではミスが続き思うようなスコアが残せず、2本目でも本人が持つトリックセレクションを出し切れない難しい戦いの中で迎えたこのゴールデンランでそんなプレッシャーを押しのける見事なランを見せた。その中でも完成度の高い「キックフリップインディグラブ」や本決勝で初めてメイクしたディープエンドでの「ボディバリアル540」を決め切るとライディング中にガッズポーズが出てしまうほど喜びを露わにしながらも綺麗にトリックをまとめてフルメイクでランを終えた。スコアも91.35ptと大きく伸ばして見せた。今回はその後の開の叩き出した91.62ptのランにより表彰台を逃す結果とはなったが、このようなプレッシャーのかかる状況で決め切りスコアアップしてくる姿には彼女が今までの世界トップクラスでの経験が活かされているのだろう。今後の大会でのさらなる活躍に期待したい。

そして迎えた最終局面、暫定2位であったトルーがトリックに失敗しスコアアップできなかったためウィニングランとなったのが長谷川瑞穂。前述した通り、3本目で素晴らしいランを見せて既に優勝が確定している彼女だったが、ゴールデンランではさらにランをアップデートさせて完全優勝して見せた。基本的には3本目と同様のルーティン構成だが、自身も「練習で乗れていない」と話したディープエンドでの「バックサイドブラントスライド」からの「キックフリップフェイキー」のコンビーネーションをメイク。最後まで綺麗に決め切ると93.34ptにスコアアップ。最高の形で大会初優勝を果たした。筆者個人的には優勝が確定した後に母親に駆け寄り喜びと感謝の言葉をかけている様子が印象的で、自分一人で勝ち取った勝利ではない親子での悲願の優勝だったことが感じ取れた。
大会結果
1位:長谷川瑞穂(日本)93.34pt
2位:アリサ・トルー(オーストラリア)92.43pt
3位:開心那(日本)91.62pt
4位:草木ひなの(日本)91.35pt
5位:ナイア・ラソ(スペイン)90.03pt
6位:ナナ・タブレット(フランス)85.20pt
7位:四十住さくら(日本)82.01pt
8位:イサドラ・パチェコ(ブラジル)67.01pt
最後に
今大会を通して筆者が正直に日本人女子選手の世界におけるレベルが過去一になっていると感じた。もちろん今回完全優勝を果たした長谷川瑞穂をはじめ、準決勝には同年代で昨年の日本王者である菅原芽依の妹である菅原琉衣が進出するなど過去のオリンピックに出場していなかった若手の台頭はもちろんだが、今回決勝に残って好成績を残した開や草木、四十住に関してもまだ隠されたハンマートリックがあるように思える。
また改めて深く今大会の男子決勝記事で言及したいと思うが、ここ最近はバーチカルをバックグラウンドを主戦場に持つ選手たちが、その持ち前のトリックセレクションや大技をパークスタイルに落とし込んで良い成績に繋げている印象も受ける。その代表格が今回優勝した長谷川と準優勝したトルーだ。今後のパークスタイルのレベルの向上にバーチカルで得られる要素も大きく関わってくるということも一つ注目すべき部分だと思う。
さていよいよ始まった3年後に控えるロサンゼルスオリンピックに向けて動き出した選考レース。過去最高レベルの競技力となった、この日本人選手勢がここから3年間をかけてどこまで世界で結果を残し、その大舞台への切符を手に入れるのか。今回がその1戦目となったが既にドラマと大波乱が予感される。今後も目が離せない。
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