2024シーズン、パリ五輪予選大会初戦直前。世界ランキングを振り返り「WST Dubai Park 2024」での注目ポイントを紹介 | CURRENT

2024シーズン、パリ五輪予選大会初戦直前。世界ランキングを振り返り「WST Dubai Park 2024」での注目ポイントを紹介

| 2024.02.25
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ついに今週末、2024年シーズンのパリ五輪予選大会としては初戦となる「WST Dubai Park 2024」がアラブ首長国連邦のドバイにて開催される。今年はオリンピックイヤーということもあり、出場枠獲得争いは激化は逃れられず、熾烈な戦いになることは容易に想像できる。

また今シーズンは「フェーズ2」に該当し、昨シーズンまでの「フェーズ1」終了時の世界ランキングポイントに基づいて選出された44名の選手に出場権が与えられる。ただしこれは世界ランキングの上位44選手ではなく、最大国枠等、オリンピック選考基準に基づいて選考された44選手となり、限られた選手だけが出場できるパリ五輪前の最終シーズンとなるのだ。

そして昨シーズンと大きく異なる点として、今年のパリ五輪予選大会では最も得点配分の大きいオリンピック・クオリファイヤー・シリーズ(OQS)が5月と6月で2戦控えている。このことからも今大会がその前哨戦として重要視される要因であり各選手にとっても今シーズンの調子を確認する上でも大事な大会になる。

本記事では男女の現在の世界ランキング(2024年2月26日現在)を元に、今大会のCURRENT的見どころを解説する。

女子パーク

繰り返しの説明となるが、パリ五輪には世界ランキング20位以上、各国からは上位3名までが出場権を獲得できる。20位以上に同国から3名以上いる場合は、繰り下げで20名になるように出場権が割り与えられる。そして現在のランキングは以下の通りだ。(2024年2月26日現在)

現在の勢力図でいうと、上位20位以内に3名以上がランクインしている国は日本、アメリカ、ブラジルであり、その中で一番多いのはアメリカで合計6名、そこに続きブラジルが4名という状況。すなわち現時点では人数的にオーバーしているアメリカ代表3名、ブラジル代表1名の計4名分を繰り下げて、日本、アメリカ、ブラジルの3ヶ国以外の代表から上位順で選ばれる。すなわち現在24位のカナダのフェイ・デ・エバート、25位のフィンランドのヘイリ・シルビオ、26位のオーストラリアのシャーロット・ヒース、28位のフランスのナナ・タブレが出場権を獲得できる状況である。

その上で特に気になるのは既に3名以上がランクインしている日本、アメリカ、ブラジルの今後の出場枠争いだろう。

まず日本人選手の争いだが、現時点で世界ランキング1位に開心那、2位に草木ひなのという順で10万ポイント以上保有しており圧倒的な強さを誇示する中で、昨シーズン怪我に悩まされたものの復調中の東京五輪金メダリストの四十住さくらが6位で続く展開になっている。

過去のパリ五輪予選大会での好成績をはじめ、昨年の世界チャンピオンになった開と同じくアジアチャンピオンになった草木。パリ五輪に向けても良い状態で今シーズンを迎えており、十分に本戦でのメダルが狙える盤石なメンバーが現在出場枠を持っている中で、大きく差が生まれている21位の中村貴咲や後続の日本人選手たちが今大会やOQSでどういうパフォーマンスを見せてくるのかが今後の注目ポイントだ。

一方で熾烈な代表枠争いを繰り広げているのがアメリカ。世界ランキング5位のミナ・ステスを筆頭に、9位にはブライス・ウェットスタイン、11位にはルビー・リリー、13位にグレイス・マーホーファー、17位にリリアン・エリックソン、18位にジョーディン・バラットと、特に10位から20位の間で多くの選手がひしめき合っている状況だ。
現在は昨年の世界選手権で3位になったステスが、9位のウェットスタインと2万5000ポイント以上の差をつけているものの、それ以降は約1万ポイント程度の得点差であり、今大会でも覆すことができるレベルであるため、どの選手が国内上位3名に残ることができるかも気になるところ。実際各選手の過去の成績も僅差であることから、今大会で順位も入れ替わると十分考えられる。

そして忘れてはいけないのがスケートボード大国のブラジル。昨年に入ってから常に安定して好成績を残しているブラジルの新星ライカ・ベンチュラが現在世界ランキング4位に入ると、ベテランの実力者であるドーラ・ヴァレーラインディアラ・アスプが12位、16位と続き、19位にはイサドラ・パチェコが残っている状態でブラジルの強さを見せている。

ちなみに筆者が個人的に今シーズンで注目しているのは、出場するパリ五輪予選大会全て優勝しているイギリスのスカイ・ブラウンだ。昨年の9月に左足を痛めたことから世界選手権を辞退し大会への出場を休んでいたが、その間サーフィンの方では11月にフィリピンで開催された国際大会で準優勝を果たすなど、アスリートとして成長を遂げている。そんな彼女が今シーズンはスケートボードでどんなパフォーマンスを見せてくれるのかが楽しみだ。今大会に出場した暁には優勝争いを見せてくれることを期待したい。

またもう1人はオーストラリアのアリサ・トルー。現時点での世界ランキングトップ20の中では最年少の13歳であり、昨年はパーク種目だけではなくバーチカル種目でも大活躍した彼女。特に昨年7月に開催された「X Games Califorinia 2023」ではパーク及びバーチカルの両種目で金メダルを獲得し、この快挙は大会最年少記録となった。そんな彼女が今シーズンも新たな快挙を見せてくれるのか注目だ。

男子パーク

男子に関しても女子同様に世界ランキング20位以上、各国から上位3名がパリ五輪への出場権を獲得できる形は変わらない。ただ女子カテゴリーと異なるのは特にトップ5までが10万ポイント以上であり、その点差はごく僅かということだ。

そんな中、女子同様に今回のドバイ大会を含め今シーズンで壮絶な代表枠争いが繰り広げられるのはアメリカだ。ストリートとパーク種目で好成績を残しているジャガー・イートンが世界ランキング1位を保持する中、3位には昨年の世界選手権3位のテイト・カリュー、4位には同大会を制し世界チャンピオンになったギャビン・ボドガーが続き、この3名が現時点でパリ五輪への出場権を持っている状態。

ただ20位まで見てみると、7位にトム・シャー、10位にリアム・ペイス、18位にテイラー・ナイ、19位にジェド・サンチェス、20位にジョシュア・ダークセンと、トップ20内に7名とアメリカ選手がランクインしている。そしてシャーとペイスを比べると4万ポイント以上の差が生まれているものの、これだけの選手がひしめき合っている状態はトップの3人にとっても気が抜けない中で迎える残り3戦となることだろう。

一方でアメリカの対抗馬として世界ランキング上位に君臨しているのはブラジルだ。2位のアウグスト・アキオをはじめ、5位にルイジ・チニ、6位にペドロ・バロスという実力者が名を連ねている。

その中で筆者が注目しているのはルイジ・チニだ。チニはブラジル国内では数々の大会で結果を残してきた選手だが、2023年のアルゼンチンで開催されたパリ五輪予選大会「WST San Juan Park 2023」までは世界大会での入賞経験はなかった。しかし同大会での優勝を皮切りにその後の世界選手権では2位と一気に世界トップへ駆け上がっている。そんな今絶好調の彼がこのフェーズ2でどんなパフォーマンスを見せるのかが注目したい。

そして我々として注目すべきは日本人勢の活躍だ。今大会には昨年の全日本選手権で上位5名に入った選手が出場資格を得たことから、現在世界ランキング12位の永原悠路に加えて笹岡建介、天野太陽、志治群青、櫻井壱世、栗林錬平にも出場チャンスがある。

もちろん永原としては今大会でも決勝進出を果たし、自身過去最高成績を残すことでパリ五輪出場権を確かなものにしておきたい一方で、他の日本人選手たちにもまだ結果次第では出場枠争いに食い込むことは可能であるため、今大会は彼らにも注目だ。

また今後の世界ランキングをかき回す存在として見逃せないのはオーストラリアだろう。東京五輪金メダリストでキーガン・パーマーが9位、キーラン・ウーリーが11位、キーファー・ウィルソンが13位、アッシュ・ウィルカムが17位で現在ランクインしている。その中でパーマーウーリーは2人とも怪我の影響から昨年の世界選手権をスキップしたにもかかわらず、現在の順位をキープしている。彼らの今後の活躍によって他国の選手の参加枠にどんな影響が出てくるかも非常に興味深い。

最後に

今大会はフェーズ2における最初の大会となる。この後にはパリ五輪予選大会で最もポイント配分の多いOQSを控えており、徐々に選手たちの一挙手一投足がパリ五輪出場を左右する展開になっていることから今大会には各選手も気合が入っているはず。

幸先良いスタートを切って良い流れでOQSを繋げていく選手は誰なのか。個人的には日本人選手たちがどこまで世界を相手に大健闘してパリ五輪出場枠争いを進めていくのかに注目したいと思う。

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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