SLS CHAMPIONSHIP TOUR 2023 at SYDNEY MENS FINAL-気持ちを乗せたベテランが涙の初優勝、世代交代はまだ早い- | CURRENT

SLS CHAMPIONSHIP TOUR 2023 at SYDNEY MENS FINAL-気持ちを乗せたベテランが涙の初優勝、世代交代はまだ早い-

| 2023.10.07
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ストリートリーグチャンピオンシップツアーの第3戦目となったシドニー大会。

ストリートリーグは独自の採点形式でラン2回、シングルトリック5回のトライ、合計7本のトライのうち4本の上位得点の合計で順位を決定する。
ランが必須ではないストリートリーグ独自の駆け引きが見られる非常に面白いレギュレーションだ。
さらにはノックアウトラウンドから非常に面白い戦いが繰り広げられるのでこちらの流れから視聴しているとよりファイナルも楽しめると感じた。

男子決勝はノックアウトラウンドグループ1から非常にハイレベルなグループを僅差で制した日本の根附 海龍、グループ2からこちらも僅差を制したルーカス・ラベロ(ブラジル)、グループ3からラストトライで見事な逆転劇を見せたナイジャ・ヒューストン(アメリカ)、グループ4からベテラン対決を制したフェリペ・グスタホ(ブラジル)、そしてノックアウトラウンドで2位以下から最もポイントの高かったライダーが勝ち上がれる「セカンドチャンス」を獲得したグループ2のダショーン・ジョーダン(アメリカ)、から第2戦の地元東京大会を制しシードから堀米 雄斗(日本)というスタートリストとなった。


久しぶりのファイナル進出となったフェリペ・グスタホ(ブラジル)が進出を決めた瞬間に感情を爆発させ涙を流していたのが印象的だった。
それだけこのStreetLeagueという大会が世界のトップライダーにとっても重要な大会だということが理解できる。


前日に開催された本選への出場権をかけた「セレクトシリーズ」から勝ち上がり勢いにのる根附(日本)がワールドファイナリスト常連組にどのような戦い方を見せるかが注目だ。


【ラン】
1本目
ファイナルの最初の花火を打ち上げたのは敗者復活の位置付け、セカンドチャンスで勝ち上がったアメリカのダショーン・ジョーダンだ得意トリックで繋ぎ最後はダウンレッジをバックサイドクルックドグラインドで登り8.6の高ポイント。
日本の根附はノックアウトラウンドで完璧に見せたランをリプレイかのように再現してみせ当然のように9.4ポイントとファイナリスト最初の9ClubでSLSファイナル常連の先輩たちに挨拶してみせた。


2本目
いきなり新入りに強烈な挨拶をかまされた先輩たちも黙ってはいなかった。
ナイジャ・ヒューストン(アメリカ)がスイッチヒールフリップフロントサイドボードスライド、センターのブーストモバイルセクションでバックサイド180ノーズピックグラインドなどフルメイクし9.0と根附をピッタリマーク。


日本の先輩も黙ってはいなかった。
堀米はダウンレッジで360キックフリップフロントサイド50-50グラインド、ダウンレールでノーリーフロントサイド180スイッチフロントサイドフィーブルグラインドなどこちらもパーフェクトメイクで9.2のハイスコアをマーク。

ランを終えた時点で首位根附から3位ナイジャまで0.4ポイントと僅差でシングルトリックセクションへ。
シングルトリックではスコアメイクできるトリックを多くもつ堀米(日本)とナイジャ(アメリカ)がやや優勢と予想されるが、ここで根附がどのようなトリックチョイスをし、それを決めるかで大きく結果を左右するだろう。
また大きくスコアも離されていないので全員にチャンスがあると言える。




【シングルトリック】
一本目
久しぶりのファイナリストとなったフェリペ スイッチキックフリップスイッチノーズグラインドをダウンレッジで決め9.0の9CLUBを獲得


暫定2位の堀米はノーリーフロントサイド180ノーズピックリバースアウトで9.4と首位の根附にプレッシャーをかけた。
根附はミスしここで順位が入れ替わった。



2本目
ルーカス フェイキー360フリップバックサイドリップスライドリバースアウト ダウンレールを決め9.3


ナイジャ(アメリカ)はスイッチヒールフリップフロントサイドスイッチ5-0グラインド180アウトをダウンレッジで決め9.0と着実にスコアをマーク。
根附(日本)は連続でミスが出てしまいこれ後がない状況に。




3本目
やはり経験値の差か、ナイジャ(アメリカ)がスイッチヒールフリップバックサイドクルックドグラインドをダウンレッジで一発で仕留め、9.1ポイントをマークし後続にプレッシャーをかけた。

堀米 根附共にミス、この時点で初の決勝に進んだ根附の優勝の可能性が消えてしまう。




3本目を終えた時点で、暫定順位は1位ナイジャ(アメリカ)、2位ダショーン(アメリカ)、3位フェリペ(ブラジル)、4位ルーカス(ブラジル)、5位堀米(日本)、6位根附(日本)。
5位堀米までがまだスコアを完全に揃っておらず、揃えられるチャンスも残っているため優勝争いは後半へ。




4本目
ノックアウトラウンドから気持ちが入っていたフェリペ(ブラジル)がスイッチキックフリップスイッチフロントサイドテールスライドをダウンレッジで会心の出来で成功し8.8ポイントを獲得、最初のスコアを揃えたライダーとなった。

後続が次々とミスする中、この嫌な流れに乗ってしまい堀米もスイッチバックサイド180アリウープノーズグラインドを一度は乗ったかと思われたが着地後にバランスを崩していまい痛恨のミスこの時点で優勝の可能性は潰えた。


最終滑走を残し、2位ナイジャ(アメリカ)、3位ダショーン(アメリカ)まで優勝の可能性を残した。



5本目
順番が入れ替わり暫定順位が下位からトライ。
根附(日本)は最終トライもミスしこのシングルトリックではスコアをマークすることはできなかった。
堀米(日本)もミスし消化不良の5位で終える。
決めれば表彰台のルーカス(ブラジル)はミスで終え4位が確定。
8.1以上で逆転のダショーンはここ一番の勝負強さを見せビガーフリップフロントサイドボードスライドをダウンレールで決め9.0と暫定で首位に浮上。

後続のナイジャ(アメリカ)、フェリペ(ブラジル)にプレッシャーをかけた。

8.0で逆転のナイジャ(アメリカ)はブーストモバイルセクションでキックフリップバックサイドスミスを狙うもミスで3位確定。


この時点で優勝はダショーン(アメリカ)かフェリペ(ブラジル)に絞られた。
最終トライとなったフェリペ(ブラジル)は8.5で逆転となる。
逆転初優勝をかけたノーリーキックフリップフロントサイドノーズスライドは見事にデッキをフリップさせダウンレッジでノーズを押さえきり決めてみせた。


これには会場中はおろか、優勝を争っていたナイジャやダショーンも歓喜。
まだスコアは出ていないにも関わらず全員がこのプレッシャーに打ち勝ち見事にやり切った、そしてこの日おそらく誰よりも気持ちが乗っていたフェリペを称賛するかの如く歓声が鳴り止まなかった。

スコアは8.8、この時点でフェリペの初優勝がコールされた。



SLSの初期の頃から参戦しているブラジルのフェリペ・グスタホが涙の初優勝を飾った。
ここ最近の国際大会ではなかなかファイナルへも進めないことが多く、己とも戦い続けていただけに
この喜びは計り知れない。


SLS 2023 WORLDCHAMPIONSHIP TOUR SYDNEY MENS FINAL Results

優勝 : フェリペ・グスタホ(ブラジル)35.4pt
2位 : ダショーン・ジョーダン(アメリカ)35.0pt
3位 : ナイジャ・ヒューストン(アメリカ)27.1pt
4位 : ルーカス・ラベロ(ブラジル)23.8pt
5位 : 堀米 雄斗(日本)18.6pt
6位 : 根附 海龍(日本)9.4pt



今大会の注目ポイントの一つはセレクトシリーズから勝ち上がり
初のSLSファイナリストとなった日本の根附 海龍だ。
ファイナルも含めて全出場者の中でランでは9.4ポイントと最高得点をマーク。
十分に現在の世界トップレベルと互角以上に戦えることが証明された。
その一方で課題も露わになった。
ランの高得点を活かすシングルトリックでのハイスコアトリックが必要だ。
日々変化する採点基準の中で根附が8.5以上をマークできる持ち技が少ないのだ。
今回はそのことを肌で感じられたことが大きな収穫となった。
次回以降そこをどうスキルアップしてくるかが注目だ。

現在10代から20代前半の若手ライダーが世界戦を席巻する中、スケートボードストリートの男子はまだまだベテラン勢が健在だ。
そんな中でも今大会はフェリペの気持ちが乗っかっていたと言わざる得ない。
ノックアウトラウンドで見事ファイナルを決めた瞬間、感情を露わに涙している姿が今大会一番印象的だった。
筆者は何度かフェリペとは面識があるが、どちらかというとクールでいつでもクレバーな印象しかなった。
そして優勝を決めた瞬間泣き崩れるほどこのストリートリーグという大会がいかに偉大かということが、世界のトップライダーにとってどれだけ名誉な大会かということを理解させてくれた。

若手が台頭しつつある昨今。
まだまだフェリペやライアン・デセンゾ(カナダ)、トミー・フィン(オーストラリア)や今大会は欠場となったがケルビン・ホフラー(ブラジル)が気持ちとスキルを乗せて戦い続ける限り「世代交代」という言葉は必要ないだろう。



次は年間王者を決めるスーパークラウン。
次世代か、ベテランか、はたまた一番勢いのある堀米らの中間世代か。
オリンピック出場権争いと共に目が離せない。

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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