X GAMES CALIFORNIA MEN’S VERT FINAL | CURRENT

X GAMES CALIFORNIA MEN’S VERT FINAL

| 2023.07.24
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アメリカ合衆国のカリフォルニア州はベンチュラで開催されている「X GAMES CALIFORNIA 2023」にて、現地時間2023年7月21日午後6時からスケートボード男子バートの決勝が行われた。

なお今大会には、スケートボード界の神と呼ばれるレジェンドで自身もバート種目の現役選手であるトニー・ホークが、決勝メンバーを「ベストオブベスト」と呼ぶほどであり、世界中で最もレベルの高い10名が参加しメダル争いを行れることが明確化された。

今大会の決勝メンバーには、バートアラートで優勝し今大会前日のメガパーク種目でも既に金メダルを獲得しているフランスのエドアルド・ダメストイや、常に観客を見たことないトリックで魅了し自身7個目の金メダル獲得を狙うアメリカのジミー・ウィルキンス、そしてトニー・ホークが今大会で一番注目しており日本のスケートボートバート界を牽引している日本の芝田モト。それ以外にもX Gamesメダリストや世界チャンピオンの経験を持つスケーターたちが若手からベテランまで勢揃いした。

正直誰が勝ってもおかしくないメンバーで実力はかなり拮抗しているため、極限までに追求された超高難度トリックをいかにミスなくメイクできるかが勝敗の大きな分かれ目となる大会となった。

今大会のフォーマットはジャムセッションによるベストラン採用方式。36分間の中で一人30秒のランをトライし、複数回滑走したランから最も高い得点のランをベストスコアとして採用するルールの下で熾烈なメダル争いが繰り広げられた。

大会レポート

【ラン1本目】

ロニー・ゴメス

各選手が一発目でそれぞれ身体が温まりきっておらず苦戦する中で、その雰囲気に飲まれずにフルメイクで自分のランを魅せたのがブラジルのベテランスケーターのロニー・ゴメス。

540を中心として回転系トリックで繋ぎ、バリアル・フリップインディーやスイッチ・フロントサイド・ヒールフリップなどのトリックも組み込んだランで85.00ptをマークし、1本目の中でも頭角を表した。

ジミー・ウィルキンス

またその流れにうまく乗ったのはウィルキンス(アメリカ)。先に出走する選手たちのミスが続く中で周りに影響されず自分のランを展開。アリウープ・インディー・540やフェイキー・720と高難度のトリックをメイクしていく中で、終盤ではテールグラブ・マッケンジーという大会では他の選手が過去にトライしたことのない技を見事にメイク。会場全体が大きな歓声に包まれる中で見事92.33ptという超高得点を叩き出した。このハイスコアが他選手への大きなプレッシャーとなり完全にウィルキンス優勢の展開にシフトしていくのだった。

【ラン2本目】

1本目で目ぼしいスコアを残せていない選手が多い中で、各選手がなんとか得点に繋げて残りのランを有利に展開したいと画策し挑むラン2本目。ここでは全体的にランをまとめてきた選手と、未だフルメイクができずに苦戦する選手で二極化したように感じた。

ここでまずしっかり1本目のミスをカバーしてきたのがアメリカのミッチー・ブルスコ。過去に何度もX Gamesでのメダルを獲得しており、今回19回目のX Games出場となった彼が720や高難度のスイッチ・バックサイド・520を織り交ぜた見事なランで90.33ptをマークし、ウィルキンスに続く。

ミッチー・ブルスコ


その後、最年少金メダリストの記録を持つブラジルのギー・クーリーも自身の持ち技である900を見事にメイクしランをフルメイクでまとめ、スコアを87.66ptとするなど良い流れも続いた。

ギー・クーリー

そしてこの2本目で観客を驚かすランを見せたのが芝田モト(日本)。芝田はアリウープ・ツイスト・720など高難度トリックを組み込むランで終始会場内は大盛り上がり。89.00ptをマークした芝田は彼自身もこの得点には納得した様子で、その表情からは次のランでは更に上回るライディングを見せてやるというやる気に満ちあふれていた。

芝田モト

一方で、思うようなライディングができておらずフラストレーションが見られたのが、優勝候補の1人であり「X Games Chiba 2023」にて同カテゴリーで金メダルを獲得したダメストイ(フランス)と同じく「X Games Chiba 2023」の同カテゴリーベストトリックの金メダリストのエリオット・スローン(アメリカ)だ。
しっかりメイクさえできれば十分にメダル争いができる高難度トリックを多く持つ彼らだが、中々メイクできないでいた。おそらくウィルキンスの高得点がプレッシャーになっていたのだろう。

【ラン3本目】

怒涛の1本目と2本目を終えて迎えたラン3本目は、それぞれの選手たちの状況に応じた三者三様の展開。3本目に入った時点で残り時間が15分であったため、おそらくランは残り2本となるだろうと想定される中で、ここで何とか得点に繋げて最後に希望を作るランを見せたのは、ブラジルのアウグスト・アキオと、ドイツのポールルーク・ロンチェッティだ。

パーク種目で大活躍のアキオはメロングラブ540を皮切りにアリウープ・キックフリップ・インディーとキックフリップ540を盛り込んだランを展開し、フルメイクで今回自身最高得点の83.00ptでラストランを迎える形に。

一方で、ロンチェッティも高いジュードーエアーをはじめ、360フリップ to インディーや、ヒールフリップ to インディーをメイクし81.00ptと自身最高得点を残した。

ラン3本目終了時点ではトップがウィルキンス、2位にブルスコ、3位に芝田の順であり、この時点で残り時間が5分で次がラストランとなった。

【ラン4本目】

泣いても笑ってもここで決めなければ逆転は無い大一番となったラン4本目。ウィルキンス、ブルスコ、芝田の3名によるトップ争いに加えて、まだ得点を残せていないダメストイやスローンが彼らに対して一矢報いるのかが注目となった。

最初に出走したのは暫定2位につけるブルスコ。3本目と同様に更なるスコアアップを目指すが最初のトリックである900をメイクできずにここで離脱。その後はスローンを含め各選手がフルメイクできずに得点が伸ばせない展開となったが、そんな中で順番を迎えたのが芝田。
芝田は常に自分に集中しているような様子でランを迎えているところが特徴的だったが、ここでその今大会一番のランを見せる。2本目にメイクしたルーティンの完成度を更に上げたランでブルスコに猛追をかけるも、同じトリックのルーティンだったからか得点はあまり伸びず89.33ptとした。この時点で暫定トップ3名の中での順位の入れ替わりは無くなった。

トム・シャー

そんな状況下で滑走したのはバート種目だけではなくパーク種目でも多くのメダルを獲得している実力者のトム・シャー(アメリカ)。彼も今回はなかなかメダル争いには食い込めない中、最後のランでは360フリップ to インディー フェイキーなどを見事に決めてフルメイクでランを終え自身最高得点の86.33ptをマークした。

エドアルド・ダメストイ

そして最後は暫定トップのウィルキンスと、もう1人の優勝候補であるダメストイの一騎討ち。実はウィルキンスは1本目以外は序盤でミスをしており、最後のランも2本目と3本目と同様にほぼノースコアの状態。1本目の92.33ptを守り切り金メダルを手に入れられるのかは、最終滑走者のダメストイのランの結果に託された。

ダメストイは序盤からパワフルなキックフリップインディー、そしてロデオフリップ・540など順調に高難度トリックをメイク。このままフルメイクを達成できるか期待された最中、キックフリップインディー・360で転倒し、惜しくも逆転とはならなかった。

この瞬間、終始ラン1本目の92.33ptを守り切ったウィルキンスが見事スケートボード男子バートにて自身7個目となる金メダルを獲得した。

【大会結果】

優勝 ジミー・ウィルキンス (アメリカ合衆国) 92.33pt
2位 ミッチー・ブルスコ (アメリカ合衆国) 90.33pt
3位 芝田 モト (日本) 89.33pt
4位 ギー・クーリー (ブラジル) 88.00pt
5位 ロニー・ゴメス (ブラジル) 86.66pt
6位 トム・シャー (アメリカ合衆国) 86.33pt
7位 アウグスト・アキオ (ブラジル) 83.00pt
8位 ポール-ルーク・ロンチェッティ (ドイツ) 81.00pt
9位 エドアルド・ダメストイ (フランス) 70.66pt
10位 エリオット・スローン (アメリカ合衆国) 40.66pt

最後に

今大会を通じて、まず感じたことはこのハイレベルの戦いを勝ち抜くためにはトリックの難易度には一切妥協が許されないということだ。守りに入るランではスコアを伸ばすことはできないため、その高い緊張感の中で自分たちの持つ最高難度のトリックをしっかり決め切りフルメイクで終えられるかが肝となってくる。

一方でメンタル面での駆け引きが勝敗を分ける大きな要素であると見て取れた。今大会はそういう意味では完全にウィルキンスの戦略勝ちだったとも言えるだろう。彼の真意が分からないためこれ以上の言及はしないが、完全にダメストイやスローンはウィルキンスのランにプレッシャーを感じていたと見て取れる。今後はもっとメンタル面の駆け引きが、最高難度トリックのメイクと同じくらい重要視されてくると考えられる。

また最高難度トリックのメイクという点では、今回日本の芝田が見せてくれたライディングと大会中の表情からはさらなる可能性を感じさせてくれたので、今後更に激化するスーパートリック合戦の中で芝田がどんなパフォーマンスを見せてくれるのかも期待していきたいと思う。

これからどれだけスケートボードバートシーンが進化していくのかも注目していきたい。

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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