2代目オリンピック女王は14歳の吉沢恋、銀メダルに赤間凛音とやはり強かった日本勢!-パリオリンピック ストリート女子- | CURRENT

2代目オリンピック女王は14歳の吉沢恋、銀メダルに赤間凛音とやはり強かった日本勢!-パリオリンピック ストリート女子-

| 2024.07.29
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オリンピック競技として2度目となったパリオリンピック、スケートボード競技。
初代金メダリストの西矢椛がパリオリンピック出場権を獲得出来ず、この競技新たな金メダリストが誕生することが確実となった。

22名で行われた予選を勝ち上がった8名は、予選ラストトリックで見事8位に滑り込んだポエ・ピンソン(アメリカ)、予選ランではフルメイク出来なかったがトリックセクションで見事立て直したライッサ・レアウ(ブラジル)、得意のスイッチトリックで安定したスコアメイクをしたペイジ・ハイン(アメリカ)、終始安定したライディングでしっかりプレイスメントポジションをキープした中山楓奈(日本)、ラン、トリック共に盤石ではなかったにも関わらずこの順位での通過は流石のスキルだったクロエ・コベル(オーストラリア)、浅いキャリアながらここ最近は国際主要大会でも決勝常連組となった今大会の台風の目、チェンシー・チー(中国)、独自のトリックチョイスで世界での評価もトップに、決勝ではまだ見ぬ新技の披露なるか、赤間凛音(日本)、パリオリンピック予選の最終2戦で一気にブレイク、世界ランキングそのままに堂々の首位通過を果たした吉沢恋(日本)と誰が勝っても不思議ではない

フォーマットは「ラン」は2回トライ中の高い方のスコアを採用、「トリック」は5回トライ中の2つの高いスコアを採用、「ラン」と「トリック」の合計300点満点で優勝を競う。




【ラン】 

1本目

オリンピック独特の雰囲気の中で決勝がスタートした。
優勝候補筆頭のライッサ(ブラジル)は序盤で繋ぎトリックであるキックフリップをミス、これは予選からタイミングが合っていなかったのか本番でもいきなりミスとなったがこの1トリックのみのミスで71.66とまずまずのスコアでスタートした。
もう一人の優勝候補、クロエ(オーストラリア)も中盤での1ミスにより70.33とプレッシャーをかけられなかった。
経験豊富なライダーがスコアメイクに苦戦する中、「とにかく楽しみたい」と語っていただ吉沢(日本)が1本目から見せた。
やはりオリンピックの緊張感からか動きの硬さは見え最初のビッグハンドレールでのキックフリップフロントサイドボードスライドはギリギリ耐えた、続くハンドレールでのバックサイドビッグスピンフロントサイドボードスライドは完璧に決めたがカーブでのバックサイドテールスライドも着地が少し乱れたがしっかりリカバリーし唯一のフルメイクで85.02のハイスコアをマークし他ライダーにプレッシャーをかけた。



2本目

予選、1本目の調子そのままにライッサは精細をかいてフルメイクならず、金メダル争いに黄色信号か。
東京オリンピック銅メダリストの中山(日本)は伝説のスケートビデオGirlChocolateで使われたキーナン・ミルトンの曲でスタート、筆者は個人的に非常にテンションが上がってしまった。
代名詞的トリックのフロントサイドクルックドグラインドをビッグハバレッジでスタートしていくとバックサイドクルックドグラインド、バックサイド5050グラインドとテンポよく繋いでいくとバックサイドリップスライド フロントサイドテールブラントスライドなど力強いライディングでラストトリックのフロントサイドボードまでフルメイクで79.77をマークと。

優勝戦線に食い込みたい赤間はハンドレールでフロントサイドフィーブルグラインドからスタートしていくと彼女の代名詞バーレーグラインドリバートからフロントサイド360、フロントサイドビッグスピンなど独自の高難易度トリックをしっかりフロントサイド180ノーズグラインドまで完璧にフルメイクし暫定トップとな89.26。

吉沢も1本目と同じ構成だったがより完成度上げ86.80とスコアアップしたが暫定2位つけた。


日本人1,2,3で「トリック」セクションへ。








【トリック】 

1本目

ランでの遅れを取り返したいライッサクロエはそれぞれ1本目をミス。
安定してスコアメイクをしているのがスケートボード歴若干約3年、中国のチェンシーだ。
メインセクションの10段ステアでのキックフリップメロングラブを決め86.98とハイスコアだ。
ランの2本目でペースを掴んだか暫定首位の赤間は女子ライダーでは彼女しかトライしないフロント270リップスライドフェイキーを1発で仕留め、92.62ここまでのハイエストスコア。
ここで離されたくない吉沢はハンドレールでキックフリップフロントサイドボードにトライするもミス。


まだ残り4本あるが、ここまでは赤間が優勢か。


2本目
巻き返しを狙うライッサはキックフリップバックサイドリップスライドをハンドレールで2回目でしっかり決め92.88とこの日のハイエストスコアを更新、メダル争いにしっかり踏みとどまった。
アメリカのペイジは得意のスイッチスタンスでフロントサイド50-50グラインドをハンドレールで決め86.82とこちらもハイスコア。
勢いに乗る新鋭、チェンシーはキックフリップバックサイド50-50グラインドをビッグハバレッジで決め89.11とスコアを揃えた。
後続にプレッシャーを与えておきたい赤間はフロントサイド180スイッチ50-50グラインドをハバレッジでトライ、片方のトラックが掛かっておらず多少の減点になったと思われるが84.07のハイスコア。
メダル争いに離されたくない吉沢はキックフリップフロントサイドボードスライドをハンドレールで2回目でリカバリーし86.34とこちらもまだまだメダル争いの射程圏内につけている。

2本目終了時点で暫定首位は赤間、2位にチェンシーとスコアをフルマークしている二人だ。




3本目
このトライで唯一スコアをマークしたのがアメリカのスタイラー、ポエのみ。
スピードをつけてセクションに向かうとバンクトゥでのトランスファーバックサイド5-0をギャップレールで決め88.43をマーク。
3人目のフルマークライダーあなった。


4本目
メダル争いに後がないライッサは3本目でもトライしたキックフリップバックサイドスミスグラインドをハンドレールで試みたがミスし最終トライに全てを賭ける。
中山クロエは共に1トライ目から挑戦しているフロントサイクルックドグラインドをトランスファーハンドレール 、フロントサイド50-50グラインドキックフリップアウトを共に4本目もミスしメダル争いから脱落となった。
このチャンスにメダル圏内を確実にしたいチェンシーもキックフリップバックサイド5-0グラインドを果敢に乗りに行くがミスとなった。
一気に突き放したい斬愛知首位の赤間は本人がこだわっていると言っていた、フロントサイドフィーブルグラインドフロントサイド180アウトフェイキーに挑んだが惜しくも回転不足となりミス。
優勝争いにはなんとしても決めなければならない、女子の現状での世界最高難易度級のトリック、ビッグスピンキックフリップフロントサイドボードスライドをハンドレールでトライする吉沢はビッグスピンフリップフロントサイドボードスライドを2トライ目にして見事にメイクした96.63と本日のハイエストスコアを更新すると共に逆転で首位にたった。
この日一番の歓声となった会場とは裏腹に吉沢は非常に落ち着いた表情とリアクションで両手を突き上げた。


5本目
約3年に及ぶパリオリンピックの集大成となるラストトライ。
アメリカのポエ・ピンソンはアールトゥバンクでのバックサイド540ノーズグラブにトライし会場を盛り上げたがミスし222.34、5位で今大会を終えた。
ランでの出遅れが響き優勝は難しいポジションとなったライッサ・レアウ(ブラジル)は暫定3位のチェンシーまで77.02ポイント差。このポイント差を詰めるべくハンドレールでのキックフリップフロントサイドボードスライドにプラン変更し見事一発でメイクし、88.83と暫定3位に順位を伸ばした。
アメリカのペイジ・ハインはスイッチフロントサイドスミスグラインドをハンドレールでトライするもミスとなり6位で今大会を終えた。ペイジのスイッチトリックは今後非常に楽しみだ。
中山楓奈(日本)はフロントサイクルックドグラインドをトランスファーハンドレールで一貫して挑戦したが決め切ることはできず7位で2回目のオリンピックを終えた。
しかし、彼女の表情は非常に晴れやかでやり切った印象だと筆者には見えた。
今大会予選から波にのきれていない印象だったクロエ・コベル(オーストラリア)は中山同様最後まで自分のトリックを貫き通しフロントサイド50-50グラインドキックフリップアウトを挑んだが決めきれず8位で初めてのオリンピック大会を後にした。
逆転で3位を狙うチェンシー・チー(中国)ターゲットとなるライッサとは11.81ポイント差となるため98.80が必要となった最終トライ、徹底してキックフリップバックサイド5-0グラインドをハバレッジでトライしたが決めきれなかったがスケートボード歴約3年のオリンピック初挑戦は堂々の4位フィニッシュとなった。
ペイジ同様今後が非常に楽しみなライダーの一人であることは最近の国際大会、そしてこのパリオリンピックでも十分に証明してみせたのではないだろうか。

これで金メダル争いは日本勢の2人に絞られた。

逆転での金メダルには87.20を出す必要がある。
赤間が4トライ目から挑んでいるハンドレールでのフロントサイドフィーブルグラインドフロントサイド180アウトはそのスコアを出す十分な可能性を持っている。
逆転なるか注目の最終トライは無常にも着地でミス、この瞬間吉沢の金メダルが確定となった。
4トライ目でのミスから精神的に少し追い込まれたか、涙を浮かべていた赤間
最終トライでも立て直せないままの滑走になったか初めてのオリンピック挑戦は悔しい2位、銀メダルとなった。
ウイニングランとなった吉沢はラストもハンドレールでハリケーングラインドをしっかり決め、89.46とさらにスコアを伸ばし、最終予選から勢いそのままにオリンピック2代目女王となり金メダルを獲得した。




[決勝結果]

1位 : 吉沢恋(日本)272.75
2位 : 赤間凛音(日本)265.95
3位 : ライッサ・レアウ(ブラジル)253.37
4位 : チェンシー・チー(中国)241.56
5位 : ポエ・ピンソン(アメリカ)222.34
6位 : ペイジ・ハイン(アメリカ)163.23
7位 : 中山楓奈(日本)79.77
8位 : クロエ・コベル(オーストラリア)70.33


パリオリンピック最終予選となったOQS2024の勢いそのままに金メダリストとなった吉沢
終始安定した滑りを見せての初挑戦で頂点に立った。
独自のトリックチョイスとセンスで惜しくも銀メダリストとなった赤間も非常に紙一重の戦いだった。
明暗を分けたのは「メンタル」だったように感じた。
当然プレッシャーはあったと思うが、終始本人も公言していた「楽しむ」ということに徹していた吉沢とメンタルでは非常に強い印象の赤間が4トライ目で少し動揺が見えたその差がメダルの色を分けたのではと推測する。
本当に紙一重だった。
ライッサもこれまでは一度崩れると大会中ではなかなか立て直せない傾向にあったが今大会ではしっかりプレイスメントを意識した戦い方で見事2大会連続のメダル獲得となった。
クロエも同様ランで掴めなかった流れを再び引き戻すことはできず8位で今大会を終えた。
古豪アメリカ勢が兆しを見せる5位、6位となり、ペイジは次大会も非常に楽しみな存在だ。
ポエは終始自身のスケートボード感を貫き通して結果的にも決勝に進む、スケートボード元来の姿で評価を得ていたように感じた。
ライッサ同様2大会連続メダルが期待された日本の中山もランでは良いポジションにつけたがトリックセクションではスコアを残すことができず7位で2回目のオリンピックを終えた。
最終予選からパリオリンピック本戦で話題として欠かすことのできないのが中国勢の存在だ。
再三言っているがスケートボード歴約3年でオリンピック4位になったチェンシー・チー。
他にも後一歩で決勝進出を逃した13歳のズなど新世代の活躍は今後の世界での勢力図を大きく動かしてくるだろう。タイの12歳、スカセムなどアジア全体のレベルが日本だけでなく非常に上がっているので今後はブラジル、アメリカ、ヨーロッパ勢などがどのようにこの「アジア強国」時代をひっくり返しにくるかも楽しみだ。


最後に、何よりオリンピック自体が2大会ぶりの有観客でスケートボード競技では初めての有観客オリンピックとなった。
予選からスタンド席は超満員でライダーの1トリック1トリックに大きな歓声が上がりこれも本来のスケートボードの良さではないだろうか。
さらには国を超えて他国のライダーにもトリックを決めると大歓声が起き、ライダーもそれに応える。
まさに会場が一体感となっていた。
ルール面では「ラン」がスコアのマスト採用となり、東京オリンピックでは「ラン」でスコアメイク出来なくても「トリック」セクションでの逆転の可能性があったため最後の最後まで諦めないライダーも多かったし、観ている人たち(無観客なので視聴者か)も最後まで逆転の可能性に手に汗握る展開だった。
今回のパリオリンピックでは「ラン」でフルメイク出来なかったライダーは相手のミス待ちという傾向のため、序盤の2トライで「ラン」のフルメイク者がスコアを揃えてしまうとモチベーションを維持するのが難しくなっっているように感じた。
これにより「ラン」の時点でのある程度の順位が見えてしまうレギュレーションは筆者としては少し物足りなく感じてしまった。
それだけシビアに正確性と技術が要求されるためレベル自体は非常に上がっていることは間違いない。
東京オリンピックからパリオリンピックでルール変更が行われた。
今後これらのルール改正がどのように行われるかも非常に注目要素である。
そして、目まぐるしく世界のトップ争いが変わる女子ストリート。
新たなオリンピック女王となった吉沢恋も一転終われる立場になったことでまだまだ上手くなる要素だらけだ。
4年に一度のオリンピックは一旦幕を閉じたがスケートボード女子ストリートの戦いはまだまだこれからも続いていく。

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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