2024年SLS開幕戦となった「2024 SLS PARIS」男子決勝。壮絶な9 Club合戦を制したのは。。 | CURRENT

2024年SLS開幕戦となった「2024 SLS PARIS」男子決勝。壮絶な9 Club合戦を制したのは。。

| 2024.02.29
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SLS(ストリートリーグスケートボーディング)の2024年開幕戦である「2024 SLS PARIS」がフランス・パリにて開催された。世界中から選ばれたストリート種目の実力者だけが出場できるのがこのSLS World Championship Tourだが、今回も過去に数々な実績を残した精鋭たちが集まった。なお今シーズンはまた東京での開催も決まったり、賞金総額も過去最大になるなどオリンピックイヤーでパリ五輪への争いが激化する一方で目が離せないのが今年のSLSシリーズだ。

そんな「2024 SLS PARIS」の男子カテゴリーはノックアウトラウンドから熾烈な戦い。各グループで「9 Club」が連発し超ハイレベルな戦いの中で決勝進出者が絞られる展開となった。また日本人選手の出場者であり今年のSLSシリーズでは好成績を残した池田大暉根附海龍も決勝進出はかなわなかった。

本決勝は全20名の出場者の中、5名1グループのノックアウトラウンドから各グループで1位通過した4人と、セカンドチャンスとして1位通過した4名を除いた出場者全体のなかでトップスコアを残した上位2人を加えた合計6名で競われる形となり、スタートリストはヴィンセント・ミルー (フランス)、白井空良 (日本)、ジオバンニ・ヴィアンナ (ブラジル)、ナイジャ・ヒューストン (アメリカ合衆国) 、グスタボ・リベイロ (ポルトガル)、オーレリアン・ジロー (フランス)の順となった。

決勝フォーマットは、女子と同様にラインセクションによる45秒間のラン2本に加えて、シングルトリックセクションでベストトリック5本にトライする中で、ベストスコアである計4本(ランは最大1本のみ換算)が合計得点として採用される形だ。なお今大会のコースはパリにある「アディダス・スタジアム」の中に特設され、コース内には大小様々なクオーターやステア、レッジなどが、街中のストリート感を意識したユニークなレイアウトの中に設置された。

大会レポート

【ラインセクション1本目】 

現在の世界ランキングトップ勢やここ最近快挙を重ねている世界最強メンバーが集まった本決勝。1本目では各選手に多くミスが見られる中でノーミスのライディングを見せたのが、年間チャンピオンを決めるスーパークラウンで過去6回の優勝経験を持つナイジャ・ヒューストン (アメリカ合衆国)。今回は全体的にスイッチ系を多く取り入れたラン構成でロングレールでの「スイッチフロントサイド5-0グラインドや、「ノーリーキャバレリアルバックサイドリップスライドフェイキー」などをメイク。さらには「スイッチヒールフリップフロントサイドボードスライド」を決めるランで「9 Club」である9.2ptをマークした。

そんなヒューストンに続く形でこの1本目で9点台を残したのがフランスのオーレリアン・ジロー。ギャップアウト系のエアーの中に高難度トリックを入れ込むライディングを強みとするジローは「ノーリーバックフロントサイドキックフリップ」や彼の代名詞トリックの一つである「ハードフリップ」を回してから入る「バックサイドリップスライド」、そして豪快な「バックサイド360」をギャップアウトで決め、最後は少しミスが見られるも9.0ptをマークして幸先の良いスタートを切った。

【ラインセクション2本目】

一方、2本目では選手全員が「9 Club」を出せないランが続いた。その中で唯一8点台をマークしてきたのはジオバンニ・ヴィアンナ (ブラジル)ヒューストンだ。


昨年の「SLS SUPER CROWN WORLD CHAMPIONSHIP」SLSでの初優勝を果たし、ディフェンディングチャンピオンとして今シーズンを迎えるジオバンニ・ヴィアンナ。なかなか他の選手がやらないトリックコンボを得意とする彼は「フェイキーインスイッチフロントサイドクルックドグラインド」を皮切りに、レールを逆向きに上り「フロンドサイドボードスライドレールアップ」など様々なフリップやスライド系のトリックをメイクすると1本目の7.2ptをスコアアップする8.8ptをマークした。

ヴィアンナに続いて、この2本目で8点台を残したのはヒューストン。1本目のランの完成度を上げながらさらなるスコアアップを目指したが、最後に「スイッチキックフリップフロントサイドボードスライド」をミス。それでもそこまでのライディングが評価されて8.1ptをマークした。

【シングルトリック1本目】

SLSルールは近年のパリ五輪予選で採用されているオリンピックルールと異なり、ランで高得点が残せなくてもこのセクションで十分に逆転が可能なフォーマット。そのため一つのベストトリックの得点次第で順位が入れ替わる可能性は十分にあることから、ランセクションでミスした選手たちはここでしっかりハイスコアを残すことが求められる。そしてこの大会は本当の意味で「9 Club」合戦となり、むしろ勝つには「9 Club」を残さないとその土俵に立てないくらいのハイレベルな展開となった。

シングルトリックセッション1本目は、ほとんどの選手が見事メイクして9点台に乗せてくる展開にまずここで一発目から今大会最高得点をスコアしたのは唯一の日本人決勝進出者である白井空良 (日本)。ラインセクションではミスが重なり4.2ptと大きくビハインドを負った彼が「ノーリービックスピンバックサイドテールスライドビックスピンアウト」をメイクし9.3ptをマーク。

続いて白井のスコアに迫る高得点を残したのはグスタボ・リベイロ (ポルトガル)。彼の「トレフリップフロントサイドフィーブルグラインド」は9.2ptの評価を受けると、ジローがメイクした「ハードフリップフロントサイド180」通称「ゲットーバード」が9.1ptをマークした。

【シングルトリック2本目】

1本目から「9 Club」が連発する戦いは止まることを知らない。ただ2本目ではさらに9点台を残すべく選手たちが攻めのトリックにトライするがミスも増えていった。そんな中でようやくトリックを決めたのはヴィンセント・ミルー (フランス)。オールドスクールな動きを取り入れながらも高難度トリックをメイクする彼は、ほとんどトリックが決まらず決勝で辛酸を舐める展開となったが2本目では「スイッチキックフリップスイッチバックサイドリップスライド」をメイクして9.0ptをマークした。

ミルーに続いて、2本目でもしっかりトリックをメイクしてきたのはヴィアンナ。1本目では「キャバレリアルフロントサイドブラントスライドフェイキー」をメイクし9.0ptをマークすると、2本目では「フェイキーフロントサイド180バックサイドスミスグラインド」をメイクして同じく9.0ptをマークして安定した強さを見せた。

そんな彼らが「9 Club」がを決める様子を見ているだけにはいかないのが1本目では8.8ptにとどまったヒューストン。ここではしっかり「スイッチヒールフリップバックサイドクルックドグラインド」をレッジでメイクして9.1ptを残した。

【シングルトリック3本目】

やはり「9 Club」が連発することから全くトリックチョイスに妥協できないため、6人中4人がトリックに失敗する中、なんとかラインセクションのミスをカバーしたい白井が「フロントサイド180アーリーウープスイッチバックサイドノーズグラインドフロントサイド180アウト」通称「ソラグラインド180アウト」を綺麗にメイクすると9.3ptをマークした。

そして本決勝で「9 Club」しかマークしていないジローがここで「ハードフリップバックサイドノーズグラインド」をメイクし9.1ptとまた「9 Club」をマーク。地元フランスのファンを前に安定した強さを見せていく。

【シングルトリック4本目】

そしてそんなジローの勢いが止まらなかったのが4本目。ジローの前で全員がトリックに失敗する中で、3本目のスコアを上回るトリック「ギャップアウトバックサイド360キックフリップ」を決めて9.2ptをマークし、他選手を大きく上回り暫定トップとなった。この時点で暫定2番手についているヒューストンが次のトリックで9.4pt以上取らないと逆転はできない展開になった。

【シングルトリック5本目】

そんな熾烈な接戦の中で迎えた5本目。4本目を終えた時点での暫定ランキング順での滑走となり、ミルー、リベイロ、白井、ヴィアンナ、ヒューストン、ジローの順となった。前半の3名はミルー白井がトリックを決めきれない中、リベイロがレッジで「クルックドグラインド to ノーリーバリアルヒールフリップアウト」をメイクして会場を沸かせて9.3ptをマークし暫定2位までジャンプアップ。

残るはヒューストンジローの1位2位争いだが、ヒューストンがラストトリックを失敗したことで、ジローが勝ち越して自身初のSLS優勝を地元フランスのこの地で収めた。ジローの優勝が決まり、同胞のミルーが優勝トロフィーと共に駆け寄りハグをして、仲間たちとみんなで称える様子が見られた。

大会結果

優勝 オーレリアン・ジロー (フランス) / 36.4pt
2位 グスタボ・リベイロ  (ポルトガル) / 27.2pt 
3位 ナイジャ・ヒューストン (アメリカ合衆国) / 27.1pt
4位 ジオバンニ・ビアンナ (ブラジル) / 26.8pt
5位 白井空良 (日本) / 22.8pt
6位 ビンセント・ミルー (フランス)/ 16.6pt

最後に

今大会で通して一番感じたのは、大会のレベルが尋常ではないほど上がっているということだ。特に今回のベストトリックに関してはヒューストンが1本目で残した8.8pt以外は全ての決まったトリックが9点超えの「9 Club」だった。それだけ選手たちのメイクするトリックレベルが上がっており、もはや「9 Club」無しには優勝はおろか表彰台に上がることも許されない戦いになっている。

一方で、それだけのトリックをメイクするのはリスクも高いことから、なかなか決め切れず今大会でもベストトリックで3回以上決められたのはジローだけだった。この点からもいかにジローが地元で開催された今大会に対して特別な思いを持って調整してきて、かつファンからの応援でプレッシャーも感じる部分がありながらも勝ち切れたことのその凄さをまずまずと感じた。

ただ今シーズンのSLSシリーズはまだ始まったばかり。正直今後の戦いがどれだけハイレベルで過酷になるかは想像を絶するものがあるが、世界のトップ選手たちがどこまでレベルを引き上げてどんなパフォーマンスを見せてくれるのかに注目していきたい。

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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