Street League 2023 CHICAGO 女子決勝 | CURRENT

Street League 2023 CHICAGO 女子決勝

| 2023.05.05
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2023年シーズンの開幕を迎えたストリートリーグ。
決勝には織田 夢海、西矢 椛、中山 楓奈と日本人ライダーが進出。
ライッサ・レアウ(ブラジル)、クロエ・コベル(オーストラリア)、ロース・ズウェツロート(オランダ)
、と決勝常連勢が名を連ねた。
今回まず気になったのは国際大会では当然のように設置されていた
ビッグハンドレールセクションが無くなったことだ。
ラインのラストトリックやトトリックでここをどう攻めるかが
各出場ライダーが真っ先にチェックするポイント。
このフィールドの構成が各ライダーにどのような影響が出るか、
また駆け引きが繰り広げられるか注目のポイントだ。
またルールもオリジナルフォーマットの「ライン」2トライ、「トリック」5トライ、
この計7トライのうち、4本のスコア
を採用(ラインは1本のみ)という以前のルールと
近いものに戻り、こちらも大きな駆け引き要素となるので要注目。




「ライン」

今シーズンから呼び方が変わった「ライン」セクション。
ルールは変わらず、45秒間でトリックを繋げていき2本トライ。

そんな「ライン」セクションはスコアが分かれた。
一本目は安定したハイスキルでライッサが7.6をマーク。
西矢、中山もしっかり1本目をフルメイクしそれぞれ6.7、7.1と
2本目のスコアアップに期待できるラインとなった。
織田はフルメイクするも4.5とスコアが伸び悩んだ。
1本目で頭ひとつ抜けたのが最年少、13歳のクロエだ。
ハイスピードでギャップ&レールオーバーのオーリーでスタートすると
終始スピードと高さのあるトリックで繋ぎ落差のあるストレートレッジから50-50
キックフリップアウトをメイク。


これには実況も「ラインだぜ?ラインだぜこれ?」と連発し驚きを隠せない興奮っぷり。
スコアは8.6とここまでで唯一の8点台をマーク。

2本目も各ライダースコアを伸ばしにかかったが大きなスコアの変動はなかった。
ロースがただ一人「ライン」ではフルメイク出来ずだが5.0とまずまずのスコア。

「ライン」のスコアがマスト採用ではなくなったのでここでスコアを出せなくても
十分に優勝の可能性を秘めている。
ただ、「流れ」という意味ではここをフルメイクしているライダーの方が精神的に有利な
ことは間違いないだろう。
西矢は1本目からアップデートを図った途中のダウンレッジでのバックサイドノーズグラインドが
50-50になってしまったが少しポイントを上げた。

近年、女子のレベルが上がり「ライン」の中でも回し系トリックが勝つ勝つためには
必須になりつつある。
その中でも一際目引いたのはやはりクロエだろう。
得意のキックフリップ系のバリエーションはもちろんだが、スイッチフリップ、
さらにはフロントフリップをラインに盛り込んで来るあたり
相当な回しトリックへの自信が伺える。
間違いなくこの「回しトリック」をラインに入れることがワールドスタンダードになって
来るので今後のライダー達の組み立てに注目したい。




「トリック」

ダウンレッジでバックサイドKを決め先陣を切った織田、5.5とまずまずのスコア。
ラインで思うような数字が残せていないので挽回したいところ。
 1トライ目はクロエ以外は全員成功、


中山はダウンレッジで代名詞でもあるフロントサイドKグラインドで7.6、
ライッサも同じくダウンレッジでバックサイドスミスグランドを決め、7.4。



「ライン」良かっただけにここは決めておきたいクロエは2本目もミス、
残り3本を決めければ優勝は難しい、一転して追い込まれる状況に。


織田がギャップ越えのキックフリップから下段の台に乗るというスタイルのある
トリックチョイスで6.0と高得点で。

続くロースもダウンレッジでフロントサイドノーズグラインドで、6.5。
西矢は1本目のライッサと同じバックサイドスミスグランドを決めるが7.2とライッサよりも
0.2低く採点、これは最後に少しノーズが上がってしまった分の差と想像する。
中山ライッサも順当に決め、2本目終了時点では上位陣に順位の変動はなかった。


3本目でトリックを変えるもクロエは決めきれず、この時点で優勝の可能性は非常に難しくなった。
織田ライッサが2本目で8.0を出したダウンレッジでのバックサイドテールスライドに
挑むもミス、織田も後が無くなった。
ライッサ中山もミスで得点を伸ばすことは出来なかった。

3本目で大きくスコアを伸ばしたのは西矢
スロープレッジでバックサイドKグラインドのノーリーヒールアウトを
一発で成功、8.3とここまでのトリックセクションの最高得点をマーク。

3本目終了時点で、1位西矢、2位ライッサ、3位ロースと順位が動いた。



一矢報いたいクロエは涙の中4本目をトライもミス。
4本目で唯一成功したのはここまでトリックセクションフルメイクのロースだ。

ダウンレッジでのバックサイドテールスライドを見事成功。
8.0で2位に躍り出た。
4本目終了時点で1位西矢、2位ローズ、3位ライッサ
最終トライ勝負へ。



最終5本目、大歓声を受けたクロエはラストギャップ&レールオーバーのキックフリップに挑むも
ミス、トリックはノーメイクで終える悔しい結果に。
織田はダウンレッジでバックサイドテールスライドに挑むも決めきれず。
5位で今大会を終えた。
中山は逆転を狙いダウンレッジでフロントサイドノーズブラントを試みるが、後頭部を強打。
かなり危ない打ち方だったので一時中断されたが大丈夫だったようだ。
勝負強さを見せたのは女王ライッサだ。


フロントサイドブラントスライドをダウンレッジで二発目にして成功。
8.4のビッグスコアでロース西矢にプレッシャーをかけた。

優勝を狙うロースは落差のあるストレートレッジでヒールフリップバックサイド50-50を狙うも
掛けることができず3位フィニッシュ。

優勝には9.1ポイントが必要な西矢の最終トライ。
ダウンレッジでのフロントサイド5-0グランドフロントショウビットアウトを狙うも
着地でまさかのデッキが折れてしまう。

2023年開幕戦はライッサの優勝となった。


1位 ライッサ・レアウ(ブラジル) 31.4
2位 西矢 椛(日本)28.3
3位 ロース・ズウェツロート(オランダ) 25.8
4位 中山 楓奈(日本) 20.3
5位 織田 夢海(日本)16.2
6位 クロエ・コベル(オーストラリア)8.6



今大会での注目点は大きく変わったルールフィールドだ。
まずルールは「ライン」がマスト採用では無くなったことだ。
これは五輪ルールと事なり、仮にラインでスコアを出せなくても「トリック」で
ひっくり返すチャンスが大いにある点だ。
今回このルールの恩恵を受けたのはロースだ。
「トリック」の4本のスコアで3位表彰台を獲得。
逆にクロエはファイナルで最高得点をラインで出すもトリックで1度も
スコアを残せず、立て直せず今大会を終えた。
序盤である程度スコアをまとめられる方が精神的に
優位になることは一目瞭然だ。
最終トライで逆転したライッサは百戦錬磨、流石というしかない。

もう一つのポイントはフィールドだ。
これまで国際大会では当たり前のように設置し、スコアメイクする上で
最重要ポイントだったビッグハンドレールが無かったことだ。
これが何を意味するかということを最後にお話ししておきたい。

ハンドレールというのはトラックやデッキを掛けるところまでの
ボードコントロールが重要
で、掛かれば自動的にアウトまでは滑ってくれる。
これに対しレッジというのは掛けた後に「押す」という技術が加わってくる
掛けるまではレールほどの繊細さを要しないものの、掛けた後は絶妙な
力加減で押さなければアウトまで持っていけない
のだ。
織田のバックサイドテールスライドや中山のフロントサイドノーズブラントスライドで
デッキがすっぽ抜けるように捲られていたのが印象的だったように
やはりこの「押す」という技術までコントロールしなければ成功できないのだ。

ハンドレールとレッジではどちらも同じくらい難しいが、
ハンドレールは掛けるまでのデッキコントロールと身体のコントロールの繊細さ、
レッジは掛けるまでの繊細さはレールほど必要ないが、スピードと掛けた後の押す
意識とパワーが必要
とされる。

ここ最近、回しインのレールトリックが主流になっていただけに
一石を投じる今大会になったと言えるだろう。
今後このように対応していかなければ勝てないストリートリーグ。
各ライダーがどのように対策、適応してくるのかそちらも要注目。




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