1点差未満でひしめく表彰台は日本勢が独占!「WST WORLD CUP ROME 2025」ストリート男子決勝 | CURRENT

1点差未満でひしめく表彰台は日本勢が独占!「WST WORLD CUP ROME 2025」ストリート男子決勝

| 2025.06.21
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2025年6月8日(日)〜6月15日(日)にかけてイタリアの首都ローマ、世界遺産コロッセオに隣接するスケートパークにて「WST WORLD CUP ROME 2025」ストリート男子 が開催された。昨年行われたパリオリンピックが記憶に新しいところだが2028年のロサンゼルスオリンピックに向けた戦いはすでに始まっている。最大3名のオリンピック代表枠を争う中、World Skateboarding Ranking (WSR)の上位5位を全て占める日本勢。どのスケーターにとっても1つでも上の順位を狙っていきたい非常に重要な大会である。

ローマの今大会に参加した日本人スケーターは白井空良堀米雄斗小野寺吟雲根附海龍佐々木音憧池慧野巨長井太雅池田大暉青木勇貴斗の9名。

シード権を持つ白井空良、根附海龍、小野寺吟雲、佐々木音憧、堀米雄斗、リチャード・ターリー(スロバキア)、マティアス・デルオリオ(アルゼンチン)ジャンカルロス・ゴンザレス(コロンビア)は準々決勝から登場した。

さらに準決勝を勝ち上がった決勝は計8名で競われ、根附海龍イヴァン・モンテイロ(ブラジル)フェリペ・グスタボ(ブラジル)佐々木音憧小野寺吟雲ジオバンニ・ビアンナ(ブラジル)堀米雄斗白井空良となった。

決勝では昨年のオリンピックまで採用されていた45秒のラン2本のうち高得点1つとベストトリック5回のうち高得点2つの0〜300点での順位決定であったが、新しいフォーマット形式で開催された今大会は45秒のラン3本の高得点1つとベストトリック3回の高得点1つの0〜200点で順位が決まる仕組みとなった。ランでの比重が増え、ベストトリックの回数が減ったことにより決勝進出スケーターがどのように構成を考えてくるのか分からない形で決勝が始まった。

各ランと各ベストトリックにて注目したスケーターのライディングとトリックを厳選してピックアップしていきたいと思う。

【ラン1本目】:前日からの好調さは決勝のラン1本目でも健在!

準決勝を1位で通過した白井空良は決勝最初のランでもその好調さが見てとれた。彼のランはバランスの良さがみられた構成だった。板を横回転に回すビックスピンと自身が270度回転するしてからのレールにエントリーするトリックを2つずつ組み合わせていたことだ。極め付けは彼の得意技アーリーウープフロントサイド180 5-0グラインドをメイクし89.49ptの高得点を叩き出した。侍ポーズにて大満足のランとなった。

彼がWorld Skateboarding Ranking (WSR)の1位であることを証明するかのようなランの出来であった。彼にしか出来ないアーリーウープからのフロントサイド、バックサイド両方の5-0グラインド。さらなるニュートリックをオリンピックまでには披露してくれる予感を感じさせる。

【ラン2本目】:まさに両刀使いの根附海龍!

ラン2本目に注目したのは根附海龍だ。今大会8名の中で彼のヒールフリップをベースにした複合トリックは群をぬく。ランでの偏った方向へのトリックは得点に響くと考えられるが彼はレールでのバックサイドクルックドグラインドノーリーキックフリップアウトをメイクするなど、まさにヒールフリップとキックフリップの両刀使いができるのも彼の持ち味だ。ランのラストにはヒールフリップバックサイドテールスライドフェイキーアウトをメイクした。このランで彼はフルメイクのランであったが得点は79.48pt。眼にみえる得点の加算、減点方式ではないのがスケートボードコンテスト。彼も得点発表時にはがっかりしていた様子であった。筆者も予想より低い得点には驚きであったが、今後の彼の絶対的高得点のフルメイクランを見たいとより一層思うのであった。

惜しくもパリオリンピック出場とはならなかった彼のロサンゼルスに懸ける気持ちは人一倍強い。ヒールフリップを武器に世界で活躍する彼にこれからも期待したい。

ラン2回目で最も高得点を叩き出したのは先ほど紹介した白井空良がラン1回目の得点を更新する93.41pt。先ほどにも述べた好調さがここでも発揮されたのだった。

【ラン3本目】:手探りに始まる未知の45秒。

今大会の最も特徴である新しく採用されたラン3回目。ラン1回目、2回目で高得点を獲得したスケーターはさらに難易度を上げたランに挑んだように見えた。45秒のランの3回目は体力の消耗さも関係しているように感じフルメイクでのランを完遂するスケーターはいなかった。従来の5回から3回へと変更になったベストトリックへと移る。

【ベストトリック1回目】:同じトリックが同じ回に!?

ベストトリック1回目に注目したのは佐々木音憧ジオバンニ・ビアンナの2人だ。2人に注目したのには最大の理由がある。2人がメイクしたトリックが全くの同じであるキャバレリアルノーズグラインドであったのだ。ジオバンニはポケットからトランプのジョーカーカードをカメラに向けるなど面白い一面も。先にメイクした佐々木音憧が95.07ptでジオバンニ・ビアンナが95.06ptの誤差0.01ptであった。3度のランで体力を使う中、早々とメイクするあたり2人にとってこのトリックは自信のあるトリックであることが窺える。このようにトリックの難易度だけでなく今回は同じトリックであったが似たようなトリックであれば得点にどのような差が出るのか考察するのもハイレベルな大会の醍醐味とも言える。

佐々木音憧はSLSの絶対王者のナイジャ・ヒューストン(アメリカ)率いるデッキカンパニーに属する。世界大会含めストリートでも活躍する彼が今後さらに世界の舞台で活躍している未来が想像できる。3年後のロサンゼルスオリンピックの出場権を獲得できるか非常に楽しみである。

そんな2人の同じトリックで盛り上がったベストトリック1回目の最後にトライした白井空良。通称ソラグラインド、アーリーウープバックサイド180 5-0グラインドをメイクし94.66ptを獲得。ランの得点93.41ptと合計した188.07ptにて早々と首位の座を固めたのだ。

【ベストトリック2回目】:怪我よりもメイクに対する熱い気持ち!

ベストトリック2回目に注目したのは小野寺吟雲だ。数週間前に右腕を骨折して挑んだ今大会。そんな怪我を、もろともせずラン1回目、2回目とも90点以上を叩き出していた彼がベストトリックでチョイスしメイクしたトリックはスイッチヒールフリップフロントサイドノーズスライドビックスピンアウトだ。95.73ptの高得点を獲得。レギュラースタンスの彼はスイッチでのエントリーは進行方向が右側になるためミスをした際、着地で右腕が先に地面につきやすい。そんなリスクの中、ベストトリック1回目の失敗を糧に2回目にてメイクしたのであった。彼の強心臓っぷりが垣間見れたように感じ。メイク後の彼の喜びようは努力の結晶を物語る。

【ベストトリック3回目】:もはや初見!?想像を超えたラストトリック!

ラストトリックに注目したのはジオバンニ・ビアンナだ。ラストトリック1回目は先述したトリックにて高得点を叩き出していた彼がラストトリックに選んだのはキャバレリアルスイッチバックサイドスミスグラインド。このトリックはまずコンテストでは見たことがないのではないかと思うほどのトリックだ。ジオバンニの別名は「フェイキーゴット」多彩なフェイキートリックを持つ彼についた名前だ。ベストトリックの3回目で決め切るところには鳥肌が立つほどであり、会場も彼の最高峰のトリックのメイクに驚愕していたに違いない。95.73ptの今大会最高得点であったのだ。

決勝に進出したブラジル勢の中でもWorld Skateboarding Ranking (WSR)のランクが高いジオバンニ。銀河系軍団のデッキカンパニーに属する彼は、ストリートでもこのコンテスト同様、度肝を抜くトリックを映像に残している。ハングリー精神旺盛なブラジルのオリンピック出場権は狭き門だ。彼のまだ見ぬフェイキートリックにはこれからも注目していきたい。

【まとめ】

表彰台3名はラン終了時と変わらずの白井空良、佐々木音憧、小野寺吟雲の順で今大会が終了した。この3名はランでの得点では90点以上を叩き出した。優勝と準優勝の白井空良の佐々木音憧はベストトリック1回目にて95点近くの得点を獲得し優位に終盤を迎えることができたのではないかと思う。そして表彰台に立つ3人の点差が1点未満になるという稀に見る僅差での戦いであった。

今大会の決勝は日本勢とブラジル勢であったがアメリカ、南米、ヨーロッパと世界各国のスケーターが次回のワールドカップではリベンジに燃えていることであろう。惜しくも表彰台を逃した堀米雄斗、根附海龍はリベンジに燃え、狭き日本代表の出場権をかけたロサンゼルスオリンピックの熱き戦いはこのローマの地を境にさらに加速させていくように感じた。3年後のロサンゼルスの地で果たして誰が出場しているか分からない、そんな楽しみを元に、これからも目が離せない。

大会結果

優勝:白井空良(日本)188.07pt
2位:佐々木音憧(日本)187.93pt
3位:小野寺吟雲(日本)187.16pt
4位:ジオバンニ・ビアンナ(ブラジル)180.81pt
5位:フェリペ・グスタボ(ブラジル)172.45pt
6位:根附海龍(日本)172.32pt
7位:堀米雄斗(日本)89.52pt
8位:イヴァン・モンテイロ(ブラジル)61.23pt

東京2020オリンピックを境にますます注目を集めるコンペティションシーン。 それらを横目に変わらず進化し続けるストリートシーン。 CURRENT編集部では両シーンがクロスオーバーし、加速する近代スケートボードを独自の目線で情報をお伝えしていきます。
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