パリ五輪予選 OQS2024 上海 スケートボード ストリート男子決勝
いよいよ残り2戦でパリ五輪出場が決まるOQS、フェーズ2の第1戦目となる上海大会のスケートボードストリート男子決勝。
世界ランキングももちろんだが、各国の出場権獲得争いが激化している。
逆転での出場権獲得に是が非でも表彰台に登りたかった前回五輪王者の堀米 雄斗がまさかの予選敗退。
さらに、今大会前まで世界ランキング1位で今大会でも優勝候補大本命だった白井 空良が準決勝で姿を消した。
波乱の様相を呈した今大会の決勝に名を連ねたのは、根附 海龍(日本)、佐々木 音憧(日本)、ジオバンニ・ヴィアンナ(ブラジル)、小野寺 吟雲(日本)、クリス・ジョスリン(アメリカ)、ナイジャ・ヒューストン(アメリカ合衆国)、グスタホ・リベイロ(ポルトガル)、ジャガー・イートン(アメリカ合衆国)となった。
日本の出場権争いが非常に注目で、根附、小野寺は後続を突き放すことは出来るのか。
また、日本人5番手で追う立場の佐々木がどこまでランキングポイントを獲得できるか。
アメリカも熾烈な代表争いを繰り広げており、ナイジャが頭一つ抜き出ており今大会も決勝に残り大幅なポイント獲得が確定しているが残り2枠を現在「パーク」との2刀流でのパリ五輪を目指しているジャガー・イートン、アレックス・ミドラー、クリス・ジョスリン、ブレイデン・ホーバンが団子状態で追いかけている。
今大会ではジャガーとクリスが決勝に残り出場権争いを1歩リードしたと言えるが、日本、アメリカの出場権争いでそれぞれこの決勝での順位が非常に重要になってくる注目の決勝だ。
【ラン】
(1本目)
流れを掴む上で非常に重要な一本目は佐々木がビガースピンフリップボードスライドで勢いよくスタートしていくと高さのあるノーリーヒール、ノーリーノーズブラントまで完璧にフルメイク、本人も納得の笑顔で88.78。
グスタホもテンポよくトリックと繋いでいき、ラストのモヒカンレッジでのバックサイドクルックドグラインドノーリーキックフリップアウトではバランスを崩すも持ち堪え89.21。
ジャガーは得意のアールトリックで繋ぎスイッチバックサイドスミス、ノーリーハーフキャブスイッチ50-50グラインド、ラストのブラントストールフロントサイド180アウトまで完璧に決め91.16と唯一の90点台でトップに躍り出た。
(2本目)
1本目のミスを取り戻したい根附はアールでのフルキャブヒールフリップ、バックサイド180レイトショービット、ヒールフリップバックサイドリップスライド、インワードヒールリアバートまで完璧に1本目のミスをリカバリーし82.63
ジオバンニハーフキャブノーズグラインド、その後は1本目と同様に繋いでいきラストトリックをハーフキャブフロントノーズスライド270アウトにアップデートするも84点台とスコアを伸ばせなかった。
2本目でビッグスコアを出したのが日本の小野寺。
ダブルフロントサイドキックフリップ、バックサイド360キックフリップ、ギャップオーバーのフロントサイドブラントスライドショービットアウト、ビックスピンキックフリップショービットアウトを完璧にリカバリーしフルメイク92.81と暫定トップに。
クリスはギャップオーバーのバックサイドリップスライド、ステアのバックサイドビッグスピン、ノーリーヒールフリップをステアでこちらも完璧にリカバリーしフルメイク、87.87
グスタホも途中キックフリップバックサイドノーズスライドビッグスピンアウトにアップデートすると、1本目のラストトリックで少しスケッチーだったバックサイドクルックドグラインド91.96にスコアを伸ばした。
2本目でさらにスコアを伸ばしたのがジャガーだ。
1本目のラストトリックをスイッチバックサイドノーズグラインドにアップデートし92.55と暫定2位で小野寺をしっかりとマークした。
ナイジャのみがランセクションではフルメイクできなかった。
【ベストトリック】
(1トライ目)
ランでのスコアを活かしたい佐々木は最初のトライでノーリーハーフキャブスイッチ5-0グラインドリバートをハンドレールで一発メイクしビッグスコア91.64を獲得。
ブラジルでの五輪出場権争いが激しくなっているジオバンニはキャバレリアルフロントサイドブラントスライドをハンドレールで決め90.92。
(2トライ目)
ここでスコアをフルメイクし後続にプレッシャーをかけておきたい佐々木はキャバレリアルノーズブラントをミス。
同じくスコアを揃えておきたい小野寺はフロントサイドブラントスライドビッグスピンフリップアウトをハンドレールで決め93.07のビッグスコアを獲得しこの日最初のフルマークライダーに。
そしてここでも暫定首位の小野寺をしっかりマークしたジャガー。
スイッチバックサイドノーズブラントスライドを2トライ目でしっかり修正しモヒカンレッジで決め、93.13とここまでのハイエストスコアをマーク。
(3トライ目)
順位、スコアが大きく動いた3トライ目となった。
根附はノーリーインワードフリップフロントサイドボードスライドを着地がギリギリながらもなんとか耐え、3回目で決めこのセクション初めてスコアをマーク、92.14。
日本の五輪出場権争いにおいてこの大会でなんとしても上位に入りたい佐々木はキャバレリアルバックサイドノーズブラントスライドを2回目で見事リカバリーし91.04 、ここでスコアをフルマークとした。
2トライ目でジャガーに追い越された小野寺は好調を感じさせるトライごこの3トライ目でもギャップオーバートランスファーフロントサイドブラントスライドキックフリップアウトを決め91.46と暫定首位の座を再びを奪い返した。
ここまで思うように流れをつかめていなかったナイジャもキャバレリアルバックサイドノーズブラントスライドフェイキーの大技をモヒカンレッジでこちらも3回目でリカバリーし93.65この日のハイエストスコアを更新してみせた。
グスタホもこの流れに乗り、フロントサイドオーバークルックドグラインドノーリーキックフリップアウトさらにこちらも3回目でリカバリー90.04とマークした。
小野寺に再び首位の座を奪われたジャガーがさらにここで魅せた。
バックサイドキックフリップバックサイドノーズピックグラインドをハンドレールにて一発で仕留め92.60と再度小野寺の前に出た。
首位ジャガーと2位小野寺の差が僅か0.94と僅差のまま後半戦へ。
(4トライ目)
3度逆転首位を狙う小野寺はバックサイドテールスライドキックフリップアウトを中央のモヒカンレッジで狙うもミス。
勝負の4トライ目で唯一スコアをマークしたのがアメリカ国内での出場権争いを繰り広げているクリス。
彼の代名詞であるビッグトリック、バンクトゥレールオーバーのビッグトランスファーバックサイド180キックフリップを最初のトライで決め92.86と最終トライに望みを繋いだ。
(5トライ目)
なんとかフルマークしたい前回のドバイ大会王者、日本の根附はヒールフリップバックサイドノーズブラントスライド をハンドレールで挑むもミス、スコアを揃えられず悔しい8位フィニッシュとなった。
暫定3位と表彰台圏内の佐々木もさらにスコアを伸ばすべくバンクトゥフルオーバーのバックサイド360キックフリップをミス。
ジオバンニもなんとかフルマークし順位を少しでも上げておきたいところだったがキャバレリアルバックサイドノーズピックグラインドミスしスコアをそろえられず7位で今大会を終えた。
逆転優勝には92.4ptが必要な小野寺は4トライ目と同じくバックサイドテールスライドキックフリップアウトをモヒカンレッジで狙うも惜しくも決めきれず今大会を終えた。
最終トライで魅せたのがアメリカ勢だ。
まずはクリス・ジョスリン。
4トライ目の勢いそのままノーリーインワードヒールフリップリバートをステア決め94.61とこの日のハイエストスコアを最後で更新、順位も日本の佐々木を抜き3位表彰台となった。
なかなか本調子が出せていたいナイジャも流石のスキルをみせた。
ハンドレールでノーリーヒールフリップバックサイドボードスライドを見事リカバーし最終トライで89.13スコアを揃え5位浮上し今大会を終えた。
グスタホ・リベイロもバックサイドクルックドグラインドノーリーバリアルヒールアウトをモヒカンレッジで挑んだがミスしスコアを揃えられず6位でフィニッシュ。
この瞬間ジャガー・イートンの優勝が決まった。
最終結果
優勝 : ジャガー・イートン(アメリカ合衆国)278.28
2位 : 小野寺 吟雲(日本) 277.34
3位 : クリス・ジョスリン(アメリカ合衆国) 275.34
4位 : 佐々木 音憧(日本) 271.46
5位 : ナイジャ・ヒューストン(アメリカ合衆国) 239.07
6位 : グスタホ・リベイロ(ポルトガル) 182.00
7位 : ジオバンニ・ヴィアンナ(ブラジル) 177.39
8位 : 根附 海龍(日本) 174.77
今大会非常に印象的だったのが終始メイク率、トリックのクオリティも高かった日本の小野寺だ。
ラン、トリック、両セクション非常に高い評価を得られ、1度のミスでも大崩れしないメンタルの強化もうかがえた。
もう一人佐々木の名前も挙げておこう。
ドバイ大会では悔しい結果だったが、今大会通して非常に良いパフォーマンスだった。
持ち技も十分に表彰台圏内を狙えるレンジのスコアトリックであり次のブタベスト大会に非常に期待がもてる。
全大会王者の根附はスコアメイクに苦しんでいたように感じた。
OQS上海大会で最も注目だったのはアメリカ勢。
ランでスコアが伸ばせないながらもしっかりと5位でフィニッシュするのがナイジャ・ヒューストン。
そして、冒頭でも挙げた熾烈なパリ五輪出場権争いを繰り広げている中今大会で一気にジャンプアップした3位のクリス・ジョスリンだ。
これにより一気に世界ランキングも8位まであげ、アメリカ内でも3番手となり出場権獲得圏内まで上げてきた。
上海大会で旋風を巻き起こしているのがパークスタイルでもファイナリストに残っているジャガー・イートンだ。
何度もお伝えしている通り、二刀流でのパリ五輪出場を目指しておりここまで世界ランキング12位と出場圏内ではあったがそのポイント差は非常に僅差だった。
今大会でもパークとの両立から非常に過酷なスケジュールを予選からこなし決勝まで勝ち上がった。
さらにはその強靭なフィジカルでパフォーマンスも落とすことなく、今大会でも見事ストリートで世界チャンピオンとなった。
その過酷さと思いからか表彰式では涙を見せた。
その姿が筆者には非常に印象的だった。
これにより世界ランキングも一気にナイジャを抜いて2位に浮上、ストリート、パークの二刀流でのパリ五輪出場に大きく前進した。
そして日本勢のパリ五輪出場権争いも非常に混戦となった。
今大会2位となった小野寺が世界ランキング1位に浮上し非常に優位なポジションに。
続いたのが世界ランキングを5位をキープもポイント差で日本人2番手に上がった根附、まさかの準決勝敗退でポイントを伸ばせなかった白井が6位の3番手、今大会で決勝に残り大幅にポイントを獲得した佐々木が7位に上がった。
根附と白井が9986ポイント差、白井と佐々木が600ポイント差、根附と佐々木の差が10586ポイントとこのフェーズ2では1つの順位でひっくり返る可能性のあるポイント差となっている。
日本人トップの小野寺と2番手根附の差が98850ポイントと小野寺が最終戦を前に非常に有利なポジションだ。
前回の五輪王者で今大会まさかの予選落ちとなった堀米 雄斗は130110ポイントと出場権内の白井まで95017ポイント、青木が97716ポイントで白井まで127411ポイント差と非常に難しいポイント差ではあるが逆転の可能性を残し最終戦であるブダベスト大会へ。
このままでは終われない五輪ディフェンディングチャンピオンの堀米がどこまで最終戦に修正を加えてくるか。
今大会で逆転を許した白井もこのまま黙って終わるとは思えない。
非常に有利な位置につけた小野寺はこのままキープできるか。
好調な根附、佐々木の巻き返しなるか。
アメリカをはじめ、日本以外の各国の出場権争いからも目が離せない展開。
混戦のまま迎える最終ブダベスト大会は言うまでもないが、要注目だ。
●今日 ○イベント開催日