祖母に捧げる涙の初優勝。「2025 SLS SANTAMONICA TAKEOVER」男子決勝
アメリカ・ロサンゼルスのサンタモニカピアにて「2025 SLS SANTAMONICA TAKEOVER」が現地時間5月23日(金)に開催された。
SLSの新フォーマット、「SPOT TAKEOVER」は今年4回開催予定であり、スポットテイクオーバーとは実在するスケートボードスポットからインスピレーションされ今回の開催地サンタモニカではサンタモニカピアに実在するトリプルセットのステアをほぼ同じく再現する形でセクションが登場した。
ポール・ロドリゲスいわく「サンタモニカのアイコニックなスポット」とのことであった。実在するステアではポール・ロドリゲスはスイッチトレフリップを決めており、このスポットでの数えられるほどのメイクの中でも語り継がれる素晴らしいトリックである。
10名のスケーターが各7トライ行い、点数の良かった3トリックの得点にて競われるのが特徴の今大会の形式。堀米雄斗(日本)の欠場により実際に行われたのは9名。
決勝が行われる前に行われたワイルドカードジャムでは30分のジャムセッション形式にて熱い戦いが13名のスケーターによって繰り広げられた。日本からは佐々木音憧が参戦した。上位2名のスケーターが決勝へと勝ち上がる形式だ。ワイルドカードを勝ち上がったアンジェロ・カロ(ペルー)とコルダーノ・ラッセル(カナダ)。また直前にてナイジャ・ヒューストン(アメリカ)の欠場が発表されてワイルドカード3位のジュリアン・アグリアーディ(アメリカ)が繰り上がる形で決勝へと挑むのであった。
出場スケーター
ジュリアン・アグリアーディ (アメリカ)
コルダーノ・ラッセル(カナダ)
アンジェロ・カロ (ペルー)
ダショーン・ジョーダン(アメリカ)
ブレイデン・ホーバン(アメリカ)
シェーン・オニール(オーストラリア)
アレックス・ミドラー(アメリカ)
ルイ・ロペス (アメリカ)
クリス・ジョスリン (アメリカ)
1トライ目

ジュリアン・アグリアーディがキックフリップバックサイドリップスライドをメイクし6.8pt。コルダーノ・ラッセルはフェイキーフロントサイド270リップスライドをメイクし8.8ptを獲得。ダショーン・ジョーダンはトリプルセットステアにて得意技の360ヒールフリップ(通称レーザーフリップ)で9.1ptの今大会最初の9CLUB。ブレイデン・ホーバンもインポッシブルをメイクし7.7pt。シェーン・オニールはウォレンバーグのステアトリックを思い出すノーリーバックサイドヒールにトライするもミス。アレックス・ミドラーはトリプルセットステアにてバックサイド360オーリーをメイクするも着地でチックタック気味の判定があり7.9ptであった。
ジュリアン・アグリアーディは15歳の大会初出場ながらも会場の雰囲気に呑まれることない強心臓っぷりを発揮していたように感じる。コルダーノ・ラッセルのトリックは他のスケーターを寄せ付けない個性のあるトリックチョイスは高得点への期待が高まるのが見てとれる。ダショーン・ジョーダンの十八番トリックは流石の一言に尽き、アレックス・ミドラーも完璧な着地であれば9CLUBであったのではないかと思われた。
2トライ目

ジュリアン・アグリアーディはバックサイド270インフロントリップスライドをメイクし7.0pt。コルダーノ・ラッセルはフェイキーヒールフリップバックサイドリップスライドをメイクし9.0ptにて9CLUB。アンジェロ・カロは1トライ目と同じくトレフリップフロントサイドボードスライドを決めて8.7pt。ルイ・ロペスとクリス・ジョスリンも1トライ目同様のトリックをトリプルセットステアにてトライしたのがミスに終わった。
2トライ目にさらに得点を加算したワイルドカードから勝ち上がった2名。アンジェロ・カロも2025TAMPA PRO3位に入った持ち前のトリックを披露していて波に乗れだす予感を感じた。アンジェロ・カロはワイルドカードの30分でも一番のメイク数を決めていたためメイク率の良さが伺える。トリプルセットステアでのメイクは高得点が期待できるため、ここまでメイクのないスケーターにとっても一発逆転が可能であるた中盤のトライに期待したい。
3トライ目

またしてもアンジェロ・カロがノーリーバックサイド270ボードスライドを決めて8.7pt。ダショーン・ジョーダン、ブレイデン・ホーバンは共に2トライ目同様のトリックチョイスであったが失敗に終わり次のトライに期待したい。シェーン・オニールはノーリーバックサイドヒールフリップをトリプルセットステアにて完璧にメイクし9.0ptにて9CLUBを獲得。ルイ・ロペスはトリックを変更しキックフリップフロントサイドノーズグラインドをメイクし7.3ptを獲得。クリス・ジョスリンはトリプルセットステアにてバックサイドビックスピンフリップを3度続けてトライしたが惜しくもミスに終わった。
ワイルドカード上がりの3名がここにて2トリックにてスコアを加算してきた。やはりトリプルセットステアにてシェーン・オニールの高難易度ノーリーバックサイドヒールフリップは9CLUBの高得点であった。唯一ここまでメイクのないクリス・ジョスリンのメイクを見たい4トライ目である。
4トライ目

シェーン・オニールがまたしてもトリプルセットステアにてスイッチヒールフリップを1トライでメイクし8.0ptを獲得。アレックス・ミドラーはバックサイド180ノーズグラインド180アウトをメイクし8.8pt。ルイ・ロペスはワイルドカードにて久々にSLSに登場したライアン・シェクラーがメイクしたハーフキャブキックフリップにトライするもミス。クリス・ジョスリンがここにてトリプルセットステアにてバックサイドビックスピンフリップをメイクし8.9ptの高得点を獲得したのであった。
アレックス・ミドラーはバックサイド270オーリーフロントサイドノーズブラントスライドを狙っていたものの違ったトリックになったもののメイクに持っていく姿は、まさにコンテストの醍醐味であった。シェーン・オニールもトリプルセットステアを攻め続け波に乗り出し、クリス・ジョスリンの完璧なメイクは後半の流れを掴むきっかけになったように見えた。
5トライ目

コルダーノ・ラッセルはノーリーバックサイドビックスピンバックサイドリップスライドをメイクし7.9pt。アンジェロ・カロは540キックフリップフロントサイドリップスライドをメイクして8.8ptにて首位へと躍り出た。ダショーン・ジョーダンはフェイキートレフリップをトリプルセットステアにて完璧にメイクし9.4ptの本日最高得点に会場はどよめいた。ブレイデン・ホーバンは惜しくもバックサイドキックフリップメロングラブの着地でミスとなり、後続のスケータも立て続けにミスにて5トライ目を終えたのであった。
アンジェロ・カロのトリックの引き出しの多さに驚いた。このトリックをファーストメイクするのはTAMPA PROから続く好調さが伺える。360ヒールフリップと共に完成度の高いフェイキートレフリップを決めたダショーン・ジョーダンはビッグセクションに強い証拠を見せたのであった。トリプルセットステアが高得点を叩きだす今大会。順位へと大きく関わってくる終盤、6トライ目へと移る。
6トライ目

立て続けにフロントサイドヒールフリップをトライするジュリアン・アグリアーディ。15歳ながらに堂々とした滑りはナイジャ・ヒューストンのお墨付き。コルダーノ・ラッセルも独特のフェイキートリックを繰り出すも失敗。シェーン・オニールはトリプルセットステアにてスイッチトレフリップをメイクし9.3ptの9CLUB。クリス・ジョスリンもノーリーインワードヒールフリップバックサイド180をメイクし、ここにて今大会最高得点の9.5ptと更新した。
冒頭でも述べた実在するサンタモニカピアのトリプルセットでのポール・ロドリゲスのスイッチトレフリップを彷彿されるシェーン・オニールのメイクであった。またシェーン・オニール自身も実在するサンタモニカピアでのトリプルセットではスイッチダブルトレフリップをメイクしていることも驚愕的な事実である。解説のショーン・マルトもこのことについて述べていて、リアルストリートでのメイクは神話として今後にも語り継がれてほしいと思うばかりだ。クリス・ジョスリンの終盤の追い上げかシェーン・オニールが首位で逃げ切ることができるか、勝負の決まるラストトライが始まる。
ラストトライ

ルイ・ロペスはバリアルヒールフリップバックサイドノーズグラインドを試みたがミス。笑顔の絶えない彼は日本への来日も果たし皆からも愛されるスケーターである。ブレイデン・ホバーンはバックサイドキックフリップメロングラブをメイクし9.0ptにて9CLUBを達成。アレックス・ミドラーは会場を沸かすほどの巨大オーリーからのフロントサイド50-50に惜しくも失敗した。
続いてクリス・ジョスリンがトリプルセット横からアプローチしてバックサイドビックスピンのレイルオーバーをメイク。誰も今大会でレイルオーバーをメイクしていないだけあって会場はさらに熱を帯びた。8.8ptにてなんとラストトライにて5位から一気に首位に立ったのだ。
ダショーン・ジョーダン、コルダーノ・ラッセル、アンジェロ・カロも大技にて逆転を狙うもミスとなってしまった。最後にシェーン・オニール。再度首位に返り咲くには9CLUB以上が必要となった。スイッチバリアルヒールフリップにて一貫してトリプルセットステアを攻めたがデッキは後方へとコントロールできずクリス・ジョスリンの初優勝が決定したのであった。
大会結果
優勝 : クリス・ジョスリン (アメリカ)27.2pt
2位 : シェーン・オニール(オーストラリア)26.3pt
3位 : アンジェロ・カロ (ペルー)26.2pt
4位 : コロラド・ラッセル(カナダ)25.7pt
5位 : ダショーン・ジョーダン(アメリカ)18.5pt
6位 : ブレイデン・ホバーン(アメリカ)16.7pt
7位 : アレックス・ミドラー(アメリカ)16.7.pt
8位 : ジュリアン・アグリアーディ (アメリカ)13.8pt
9位 : ルイ・ロペス (アメリカ)7.3pt

ラストトライにて唯一のトリプルセットステアのレールオーバー越えをメイクしたクリス・ジョスリンが悲願の逆転初優勝を飾った。クリス・ジョスリンのデッキテープには「G-MA」すなわちグランドマザーを意味し祖母に捧げる優勝だと大会後インタビューで語っていた。「2025 SLS SANTAMONICA TAKEOVER」男子決勝は幕を閉じたが、すぐさま7月13日には「SLS Brasilia」の開催も予定している。今月初頭に行われたSLS Miamiのアリーナ戦とはまた違った雰囲気であった。屋外の開催は風や日照りの影響もある。様々なフード、ブランド、スケートショップのブースも今大会会場横に設置され来場者にとっては盛りだくさんのイベントであったことに間違いない。
観客を沸かせ続けた9名の決勝のスケーターに360度見渡すほどに集まったギャラリー。スケートボードがアメリカにて愛される理由を物語っていた。
ロサンゼルスの有名な観光地でもあるサンタモニカピア。そして歴史あるスポット、サンタモニカトリプルセットに最大のリスペクトを。次なるSPOT TAKEOVERは世界のどこのスポットをインスピレーションしてセクションが作られるのか今大会を終えてさらに期待が膨らむばかりだ。
スケートボードを持って世界を旅すればスケートスポットもスケーターにとってそこはまさに観光地。SLS新フォーマット「SPOT TAKEOVER」はそんな意味が込められているのかもしれない。
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